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金属3Dプリンターの第一人者が警告「人材を育てないと日本は遅れてしまう」

京極氏「先行するGEやシーメンスは明確なニーズがある」
金属3Dプリンターの第一人者が警告「人材を育てないと日本は遅れてしまう」

イツ・SLMソリューションズの金属3Dプリンター

 近畿大学次世代基盤技術研究所(広島県東広島市)の京極秀樹特任教授は、次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)のプロジェクトリーダーを務めるなど金属3Dプリンターの国内第一人者とされる。同研究所に開設した3D造形技術研究センターのセンター長として、技術の普及と人材育成にも力を注いでいる。

 ―どのような研究を進めていますか。
 「多くの共同研究を手がけているが具体的なテーマはあまり公表できない。東広島市との共同研究では、水力発電用インペラー(複数の羽根を持つ回転体)の試作を行う。水力発電プラントメーカーのイームル工業(広島県東広島市)が評価する。センターの共同研究は中国地方以外の大企業の依頼が多い。地場の企業にももっと金属3Dプリンターに触れてほしい」

 ―地場での普及は進んでいませんか。
 「金属3Dプリンターは装置も材料もまだまだ高価で、地元で導入したという話はあまり聞かない。ただ、東広島市やひろしま産業振興機構などと共催している研究会には毎回100人以上の参加者があり、関心は高まっていると感じる」

 ―人材育成の重要性を強調されています。
 「金属3Dプリンターはモノづくりを一変させる可能性がある。しかし、使う金属粉が変われば加工条件もまったく変わる使いこなすのが難しい技術でもある。何を使って何を作りたいかがはっきりしていないとうまくいかない。米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスが先行するのは明確なニーズがあるため。うまく使いこなせる人材を育てないと、このままでは日本は遅れてしまう」

 ―TRAFAMの国産金属3Dプリンター開発プロジェクトは2018年度で終わりました。
 「当初目標をおおむねクリアしたものが開発できた。さらにTRAFAMは19年度から5年間、総額7億5000万円の予算で、制御を高度化する研究を始める。より高品質で安定した生産が可能になる」
(聞き手=広島・清水信彦)

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近畿大学次世代基盤技術研究所の京極秀樹特任教授
日刊工業新聞2019年9月5日

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