小規模なのに早慶に次ぐベンチャー創出数、デジタルハリウッド大らしさの秘訣

学長・杉山知之氏インタビュー

 デジタルコンテンツの実践的な教育を行うデジタルハリウッド大学。2004年度に教育事業を手がける株式会社が、構造改革特区制度で大学院大学を開設したのが始まりだ。経歴もさまざまな教員や社会人学生が、デジタル技術によりベンチャー(VB)や異分野融合を生み出している。杉山知之学長に「常に新しいことをしていきたい」という同大らしさを聞いた。

―株式会社立大学の歩みはいかがでしょうか。

「国の仕組みに縛られつつも、新たなことができると感じている。物事を決めてやるまでが早く、カリキュラムのマイナーチェンジも毎年、進められるのは産業界の感覚があるからだ。また大学院の教員はこの分野でプロの実務家が中心で、医師やメディア人など学生も社会人が多い。そのため分野を超えた展開が目立ってきた」

―デジタル技術と、医療やファッションなど他分野との掛け合わせが強みですね。

「生活習慣病のモニタリングや服薬の継続支援システムで、プログラマーと著名大学の医師が組むなど驚くべき展開になっている。各人の脳で幸せの感じ方が異なる現象に迫る研究室も立ち上げた。大学発VBランキングは経済産業省の調査で11位。ビジネスを手がける教員や学生仲間が身近にいる環境が効いている」

―最先端技術の教員による研究大学のVBとは違うようですね。

「ポイントは仮想現実(VR)やコンピューターグラフィックス(CG)など普通の技術を活用することだ。機能が公開されている技術を取り入れ、自らの専門分野で新サービスを半年程度で作り出す」

―順調だった大学院に対して、翌年度に設置した大学では正当な評価を得るのに苦労したそうですね。

「受験産業のことを知らず背伸びだったと思う。先入観を持たれて苦労した。風向きが変わったのは3年ほど前。人工知能(AI)に仕事を奪われない創造性を、と注目が高まった。開学当初、『本当のデジタル活用は一世代先だ』と口にしていたが、実際に両親が卒業生という学生が出てきて感慨深い」

【略歴】すぎやま・ともゆき 79年(昭54)日大院理工学研究科修士修了、同年助手。87年米マサチューセッツ工科大メディアラボ客員研究員。93年日大短期大学部専任講師。94年デジタルハリウッドを設立。04年デジタルハリウッド大学院大学長。05年デジタルハリウッド大学長。工学博士。東京都出身、65歳。

【記者の目/長年の蓄積が評判確立】
インタビュイーもインタビュアーも今回と同じ、15年前の記事を見返した。「大学院は仕事を作り出せる人を育てるのが狙い」「大学個性化の時代だけに、学問をするだけでない大学があっていい」とある。個性的なトップが長年、率いることで新興大学の評判が確立されることを実感した。(編集委員・山本佳世子)

デジタルハリウッド大学学長・杉山知之氏

日刊工業新聞2019年8月29日

山本 佳世子

山本 佳世子
08月31日
この記事のファシリテーター

大学発VBなら教員の発明を重視しなくては、という思いを私自身、持っていたが、同大の例を聞いて目を開かされた思いだ。研究型大学ではない新興の小規模大学なのにランキング11位、私立では早慶に次ぐということに驚いた。社会人大学院生らが持つビジネスの課題に、デジタル技術を組み合わせてのVBや新事業なら、社会の好反応も期待できよう。ちなみに今回は15年前の記事と、学長も記者(私)も同大の広報担当者まで同じ人、という珍しい形だった。

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