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輸出管理強化も追い打ち。DRAM価格下げ止まらず、韓国メーカーの投資抑制続く

出口見えない米中貿易摩擦、有形無形の影響
輸出管理強化も追い打ち。DRAM価格下げ止まらず、韓国メーカーの投資抑制続く

サムスン電子のサーバ用大容量DRAMモジュール「DDR4」

 パソコンなどのデータの一時記憶に使うDRAMの価格下落が続く。2018年後半からIT大手などの投資抑制が明らかになり、需要のけん引役だったサーバー向けが落ち込んだ。激化する米中貿易摩擦はスマートフォンやパソコン販売にも有形無形のマイナス影響を与える。

 冷え込む市況に追い打ちをかけるのが米国のトランプ大統領だ。トランプ大統領は1日、中国から輸入するほぼ全製品に追加関税を課す「制裁第4弾」を9月に発動すると表明した。第4弾でもっとも影響を受けるのはスマートフォンとパソコンで、それはまさにDRAMの主要顧客に他ならない。

 もともと英調査会社IHSマークイットは20年夏までDRAM価格が下げ止まらないとの予測を示していたが、制裁第4弾の発動で市況低迷がさらに長引く可能性が出てきた。

 DRAM世界首位の韓国・サムスン電子や同SKハイニックス、米マイクロン・テクノロジーは米中摩擦の激化を見越して、早くから設備投資を抑制する動きを見せていた。韓国勢については、日本の経済産業省が着手した半導体材料輸出管理の見直しも慎重姿勢を強める一因だ。

 同じ半導体メモリーでデータ保存に使うNAND型フラッシュメモリーも市況低迷に苦しんできたが、DRAMと比べて足元の価格に底打ち感が出てきた。過剰在庫で安値攻勢をかけていたサムスンの在庫が適正水準に近づいた。

 東芝メモリが6月に発生した停電で四日市工場(三重県四日市市)の減産を強いられたことも逆に奏功した。年末商戦で発売されるスマートフォンなど新商品向けの需要が本格化する9月以降はNAND型フラッシュメモリーの価格も上向くとの見方がある。

 ただ、どちらの半導体メモリー市況も米国の対中制裁第4弾の影響は避けられない。日韓対立の問題も加わり、主要国が絡む通商問題の行方が今後の価格動向のカギを握る。
                   
日刊工業新聞2019年8月14日

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