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「人生100年時代」に生保業界がやるべきこと

生命保険協会会長・清水博氏インタビュー
 生命保険協会は7月に清水博氏(日本生命保険社長)が会長に就任した。「人生100年時代」に生保業界が果たす役割を再考するほか、顧客本位の業務運営を徹底する。清水会長が掲げる新たなキャッチフレーズは「新時代における希望あふれる安心社会の実現に向けて」。長寿化や人口減、デジタル化など、社会構造が変化する中で、生保業界の役割を改めて検討し、まとめる。

 2019年度に注力するのが「顧客本位の業務運営の徹底」だ。18年度、業界では外貨建て保険の苦情増加や保障そのものではなく、過度な節税効果を訴求した経営者保険が問題視された。「商品開発と販売競争が行き過ぎたことを重く受け止め、業界として反省する必要がある」(清水会長)とする。

 そこで対応を強化するのが、契約後のアフターフォローの充実と適合性の原則の順守と販売者のリテラシー向上だ。生保会社が取り扱う保険商品は数十年の長期に契約が及び、販売後の信頼関係が重要となる。「(その認識を)保険会社や金融機関の当たり前の意識にしていく」(同)。

インタビュー/生命保険協会会長・清水博氏 生活に活力、保険で手助け


清水博会長に高齢者対応やIT活用事例の調査構想について聞いた。

 ―希望あふれる安心社会に込めた期待は。
 「人生100年時代は喜ぶべきことで、デジタル化によって効率的な世の中になる。いかに生活を安定させ活力があふれる社会にしていくかは社会全体や一人一人のライフプランニングでも重要。それを保険の立場からお手伝いしていきたい」

 ―シニア世代の比率が高まる中で、業界で必要になることは。
 「サービスやメニューを拡大することが業界の責任だ。これまでも契約時の家族同伴奨励や高齢者専用のコールセンターなど丁寧なサービスを実施してきた。長生きすれば認知症や資産形成など幅広いリスクが生まれる。認知症保険やトンチン年金など商品面からサポートしていく」

 ―自助の観点からも買い手側が幼少期から金融リテラシーを養うことも重要です。
 「これまで協会では次世代への金融リテラシー教育に取り組んできた。私の就任期間では小学生に保険をテーマにした漫画の無料配布や高校大学生向けのビジネスコンテストを開きたい。こうした取り組みによって保険をより身近に考えることにつなげたい」

 ―会員各社の先進的IT活用事例を調査し報告書にまとめるような考えをお持ちです。
 「フランスはデジタル委員会が立ち上がり、ドイツではブロックチェーン(分散型台帳)の検討会が協会ベースで行われている。協会の共通インフラの種になり得るものがあるかを調査したい。銀行業界ではメガがATMを共通化する動きがあるように、コストの観点からも共通化のニーズはあると考える」(文=増重直樹)

生命保険協会会長・清水博氏
日刊工業新聞2019年7月23日

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