親が大卒でない学生向け給付奨学金、新設する東工大の狙い

「親に遠慮して大学に行きにくい学生を減らしたい」(水本哲弥理事・副学長)

 東京工業大学は、親が大学を卒業していない学生向けの給付型奨学金制度を2020年度から始める。ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典栄誉教授の寄付を基に設立した奨学金制度の中に、大学独自で予算を確保して新設する。20年度以降入学の学生が対象。親の学歴に関係なく大学に進学しやすくなるように経済支援する。同様の奨学金は米国ではあるが「日本では初めてでは」と同大では見ている。

 新型奨学金について水本哲弥理事・副学長(教育担当)は、「親に遠慮して大学に行きにくい学生を減らしたい」と狙いを説明する。地方在住者や女子生徒らが、大卒者でない親から「無理に大学に行かなくても」と言われたとしても、本人の進学希望が通りやすいように支援する。

 新型奨学金の対象は両親か、親が1人の場合はその親が、大学を卒業していない家庭の学生だ。入学後の公募で各学年15人程度に、学士・修士課程で月額5万円を支給する。原資は東京工業大学で用意する。

 すでにある同大の大隅良典記念奨学金の枠組み内に設定する。現在はノーベル賞受賞者の大隅栄誉教授や外部の寄付による地方出身者向けのものだ。

 文部科学省の調査によると、日本の2017年度の18歳人口の進学率は大学が53%だ。短大が5%、高等専門学校4年次(在籍中)が1%、専門学校が22%。合計81%になる。

 また都市部に比べ、地方は大学進学率が低い傾向がある。上位の東京都や京都府は6割超だが、沖縄県や鳥取県は4割前後と差がある。さらに女子の進学率が、伝統的に男子より低い地域も多い。

 「大卒は決して社会のマジョリティーではない」(佐藤勲総括理事・副学長)ことから、通常と異なる切り口の奨学金で進学を後押しする。詳細は19年秋に公表する。

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Q 奨学金といっても返済の有無で印象がだいぶ違う。

A 返済不要の給付型と、返済が必要な貸与型がある。給付型は経済的に苦しい学生の支援という色が強く、家計状況や成績などの基準が厳しい。そのため奨学金利用者の9割は貸与型だ。こちらは近年、制限が緩やかになって、日本では学部生の3人弱に1人が利用している。

Q 政府の日本学生支援機構(JASSO)が中心だね。

A 奨学金制度利用者の7割がそうだ。企業の財団など公共団体が1割。大学独自は1割程度で、卒業生の遺贈を活用するなど小規模なものが多数ある。近年は高校在学中に「合格したら奨学生」と確定する「予約型」が増えている。

Q 東工大の新型奨学金での意識は。

A 都市部だと親世代も大卒が多いが、それは日本全体の縮図ではない。女性活躍推進も地方は遅れがちで、女子生徒の大学進学のハードルが高い家庭などあるだろう。大学とくに理工系は教員が高学歴だが、「社会は多様だ」と学生に気づかせる教育的観点も織り込んでいる。

日刊工業新聞2019年6月6日

山本 佳世子

山本 佳世子
06月06日
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ファーストジェネレーション(第一世代)向けの奨学金は、米国で先例があり、東工大はそれを参考にしたようだ。科学技術関連の仕事をしていると、「今時は親世代も子世代もみんな大卒、大学院卒もメジャー」との感覚になりがちだ。だが今回の取材は「社会全体ではそうではない」と自らの片寄りを振り返る機会にもなった。今回の奨学金は月5万円にすぎないが、実際には対象者はJASSOなどからしっかりした奨学金も得ることだろう。そのためイメージとしては、大卒ではない親が「うちは家計に余裕はない。だが私らは高卒でも地に足を付けた仕事をしっかりしている。大学なんて出る意味はない」と主張した時の、反論材料だろうか。「東工大ではうちのようなケースを応援してくれるから、ここを受験する。末はAIスーパーサイエンティストか、ベンチャー創業者になって、父さん母さんに大邸宅を建ててあげるよ!」と息巻くのに、活用できることだろう。

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