通信速度は30年で10万倍、モバイルサービス「5G進化論」

2020年春には次世代通信「第5世代通信」(5G)が始まる

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 NTTが国内で初めて携帯電話サービスを始めたのは1987年4月。アナログ方式の音声サービスだった携帯電話通信は約10年ごとに進化を遂げ、最大通信速度は毎秒1ギガビット超(ギガは10億)と30年間で10万倍速くなった。20年春には同10ギガビット超の次世代通信「第5世代通信」(5G)が始まる。超高速、超低遅延、多数同時接続という5Gの三つの特徴を生かした新たなサービスがスマートフォンに進化をもたらす。

生活に入り込む 契約数は人口の1.3倍


 NTTの携帯電話サービス開始で登場した1号機「TZ―802型」。重量900グラム、連続待ち受け時間は約6時間だったが、91年の第2世代通信「mova(ムーバ)」の登場で重量は230グラムに軽量化。89年度には13万台だった携帯電話契約数が91年度には53万台に増えた。93年にはデジタル方式が始まり最大通信速度が毎秒10キロバイトを超えた。

 99年には携帯電話だけで、銀行振り込みやコンサートチケットなどの予約ができるオンラインサービス「iモード」が登場し、00年に対応機種が560万台を突破。01年に始まった第3世代通信(3G)で毎秒1メガビット(メガは100万)超の高速通信が可能になり、テレビ電話や映像・音楽配信サービスが普及した。

                       

 10年には4G(3・9G)が開始。通信速度が100メガビットを超え、ゲームや映画をスマートフォンで楽しむことが当たり前の世の中になった。18年12月時点の携帯電話契約数は1億7307万と国内の人口の1・3倍にまで膨れあがった。平成の30年間は携帯電話サービスが普及し、人々の生活に入り込んだ時代と言える。

自社経済圏を構築 キャッシュレス決済開始


 令和時代は携帯電話サービスが、より生活に欠かせないモノになっていきそうだ。すでに携帯大手3社と、10月に携帯事業に参入する楽天はスマートフォンを使ったキャッシュレス決済を相次いで始めた。

 各社ともに利用額の20%還元といった大型キャンペーンを次々と打ち出し、コンビニエンスストアやドラッグストア、飲食店など利用可能な店舗を増やしている。プロ野球の福岡ソフトバンクホークスや東北楽天ゴールデンイーグルス、サッカーJ1のヴィッセル神戸の本拠地でもスマホ決済を本格導入した。

 ソフトバンク系のDiDiモビリティジャパン(東京都港区)はスマホで効率的にタクシーが呼べる人工知能(AI)を活用したタクシー配車アプリの提供を始めた。「スマホを利用した新しいサービスの提供でスマホの利用シーンのさらなる拡大を目指す」(宮内謙ソフトバンク社長)狙いだ。

                            

 NTTドコモはスマホの利用データから信用スコアを算出する「ドコモ・レンディングプラットフォーム」(融資基盤)、AIを用いて資産運用をアドバイスする「テオプラスドコモ」などスマホを使った金融系サービスも始めた。こうしたサービスを増やす背景には、顧客を自社の経済圏に取り込む戦略がある。

 例えばNTTドコモは18年5月、顧客識別手段を従来の携帯電話番号から自社ポイント「dポイント」会員中心に切り替えた。dポイントをためて使ってもらうことで、dカードなどの自社決済や回線契約者が増え、顧客基盤に集まる情報も緻密になる。こうして集めた購買データを基にドコモやポイント加盟店が顧客の住む地域や属性に最適なマーケティングができ、双方が売り上げを伸ばせる「好循環を生み出す」(吉沢和弘NTTドコモ社長)狙いだ。

5Gで新たな価値 高速通信、4Gの100倍


 20年春に国内で商用化する5Gは、現行の4GLTEの約100倍の高速通信が可能。従来は5分かかっていた2時間の映画を3秒でダウンロードできる。通信の遅延がほとんどなく、1平方キロメートル当たり約100万台の機器に接続できる。この三つの特徴を生かしたスマホ向けサービスが今後、続々と生まれそうだ。

 KDDIは、スポーツの試合などを自由な視点で視聴できる「自由視点映像」を開発中だ。会場に設置した複数台のカメラの映像を手元の端末に5Gで伝送。観客は端末を操作することで、多様な視点でスポーツを観戦できる。

 スマホを用いたヘッドセットを使えば自分が選手の1人になったかのような感覚で観戦できる仮想現実(VR)映像サービスが見込める。

 NTTドコモと東北大学は、スマホで歯茎を撮影するだけで歯周病を発見できるAIの共同研究を始めた。スマホで自撮りした歯茎の画像をAIが分析して歯周病のリスクがあることを1分以内に知らせる。近い将来、スマホを通じた遠隔診療も実現しそうだ。スマホを使ってロボットを遠隔操作し、自宅にいながら農作業ができるサービスも想定される。

 5Gの普及で通信料金の体系も変わるかもしれない。NTTドコモは月30ギガバイト以上の利用でも毎秒1メガビット超の通信速度を維持するなど、携帯大手3社は実質使い放題のプランを打ち出す。

 ただ、5Gは高速大容量が売りなだけに、宮川潤一ソフトバンク副社長は「5Gの料金プランは使い放題にしないと本当の良さが出ない」と話す。完全な使い放題に近づくプランが期待できそうだ。
5Gを使えば高精細なVR映像を用いたスポーツ観戦も可能になる

(文=水嶋真人、大城蕗子)

日刊工業新聞2019年5月6日

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