ヤマハ発動機、インテル出身者がかじを取るデジタル戦略の中身

世界で個別サービス提供

「あらゆる製品をコネクテッドにしたい」と語るインテル出身の平野フェロー
 主力の2輪車や船外機のほか、電動アシスト自転車やドローンなど陸・海・空の多彩な商材を持つヤマハ発動機。デジタルマーケティングを本格化するため、1月1日付でIT本部を新設した。「顧客とダイレクトにつながることで、未来につながる面白いビジネスを展開したい」(平野浩介フェロー)と、新しい価値の創造に挑む。

 IT本部でデジタル戦略のかじ取りを担う平野フェローはインテル出身。「ITを売る立場から、使う側の立場でデジタル変革に取り組みたくなった」(平野フェロー)。大のバイク好きでもあったことから、2017年にヤマハ発動機に転身した。

 「今後、あらゆる製品をコネクテッドにしたい」(同)と、情報を集め、活用するための基盤の整備を急ぐ。20年には通信機能を搭載した「つながる(コネクテッド)バイク」を2輪車の主要市場である欧州と東南アジアに続々と投入する計画だ。

盗難対策可能


 エンジンのコンピューター制御により、燃料噴射量や加速度、振動など1台の2輪車から200種類以上の情報を取得できるという。エンジンや車体の情報を直接、得ることで、適切な点検時期の案内や盗難対策が可能になる。また普及が予想される電動バイクでは、家の中にいながらスマートフォンで電池残量を知ることができるようになる。

 平野フェローは「世界各国・地域の法規制、制約を考慮しながら、グローバルでつながりたい」と顧客とのつながりにも意欲を示す。年間約550万台を販売する2輪車のほか、マリン製品や電動アシスト自転車なども含めた同社製品のユーザーは世界に5000万人以上と想定される。ユーザーのスマホやアプリケーション(応用ソフト)の利用データをマーケティング活動に活用すれば顧客分析や行動分析、店舗施策考案、需要予測など「可能性は無限」(同)。5000万人のユーザーにワンツーワンの個別サービスを提供することも可能だ。

 他社の情報と組み合わせることで面白い発見もあった。ある自動車メーカーのスポーツ多目的車(SUV)の購入層と、ヤマハ発の電動アシスト自転車のスポーツモデルのユーザーの相関性が高いことがわかったという。「あれこれ考える前に、まずはあらゆる情報を集めてみよう」と日高祥博ヤマハ発動機社長もハッパをかける。

差別化不可欠


 「デジタル変革はあくまでも手段。最新システムを導入しても、ビジネス成長がなければ意味がない」と平野フェローは持論を展開する。成長のためには効率化のためのIT投資でなく、デジタルマーケティングを駆使した新サービスでの差別化が不可欠。「トップライン(売上高)とボトムライン(利益)の両方を伸ばすのがゴール」(同)と先を見据える。
(文=田中弥生)

インタラクティビジョン

日刊工業新聞2019年5月4日

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