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軽減税率の導入まで残り5カ月、対策不足に政府はどう動く?

いまだに楽観視するユーザーも
軽減税率の導入まで残り5カ月、対策不足に政府はどう動く?

消費税軽減税率対応への強化・加速化に向けた特別会合(17日、経産省内)

 10月予定の消費増税に伴い軽減税率を導入する飲食料品の中小小売店などに対して、経済産業省・中小企業庁は補助金制度を利用した早期のレジ導入、受注システム改修を呼びかけている。増税まで約5カ月。補助金の駆け込み申請も予想され、欠品や技術者不足による設置、システム改修で混乱が予想される。ユーザーの中には10月までには時間があると楽観視している者もいる。政府は相談窓口の充実、広報活動の強化、イベントを開催し周知徹底を図る。

関連業界に要請


 17日、企業庁は省内で「消費税軽減税率対応への強化・加速に向けた特別会合」を開催し、レジメーカー、システムベンダーなどの経営者に対して、品ぞろえやサポート体制の強化を要請した。10月に予定されている消費増税と同時に、初めての軽減税率が導入される。残された時間は5カ月余り。会合では、関連団体にも相談窓口の設置、セミナーの開催を求めた。

 予定されている10月1日からの軽減税率制度の導入で、8%と10%の消費税が併存する。対応が遅れると小売り現場の混乱、顧客の信頼喪失に繋がりかねない。同庁は、今年2月に補助金制度の内容を拡充。関連団体は、窓口の設置、セミナー開催などの取り組みを本格的に始めた。

 補助金に関する電話による窓口への問い合わせは、1月が7000件、2月が8000件、3月には1万件と月ごとに増加。4月はさらに上回る勢いだ。

ユーザー様子見


 補助金制度の申請件数は、4月までに10万台の大台を記録。ただ、同庁が見込む申請件数の30万件からはほど遠い状況。

 特別会合の出席者からも「今回も消費増税が延期される可能性があるかもしれない」「時間があり実感がない」といった意見があり、販売現場ではユーザーが様子見状態で、動きが鈍い。

 これに対して、企業庁の笹路健中小企業政策上席調整官は、「今回の補助金制度は、レジメーカー、システムべンダーにとっては、新規顧客・市場開拓のチャンスになる。中小・小規模事業者の経営改善の契機にしてもらいたい」と訴える。新たなレジ導入や高機能機に交換することで、タイムリーな販売管理や仕入れが可能になり、売り上げ増や人手不足の解消にもつながるという。

補助対象拡充


 企業庁は、2018年度補正予算で、「レジ・システム補助金(軽減税率対策補助金)」の基金を約561億円積み増し1094億円に増額。補助対象を3倍の30万事業者に拡大した。さらに対象事業者に旅館、ホテルなどの宿泊業を加えた。

 補助額はレジ、券売機が1台当たり最大20万円。商品コードの変更など商品マスタの設定が必要な場合は20万円増額の最大40万円。1事業者当たりの上限は200万円とした。申請期限は12月16日で、9月30日までの導入、改修、支払いが必要となっている。
(文=編集委員・山下哲二)
日刊工業新聞2019年4月30日

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