沖縄科技大が優秀な外国人教員の採用で成果を上げている理由

19の教員ポストに対し、約1500人の応募を集める人気に

 研究型大学の国際化において「どのようにして優秀な外国人教員を採用するか」は悩みの種だ。学生も教員も半分以上が外国人という沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、採用通知後の個別交渉に時間をかける点で“世界標準”だ。2018年度は公募時期や広告媒体も工夫。19の教員ポストに対し、約1500人の応募を集める人気となった。

 OISTは世界トップクラスの研究教育と沖縄振興で、政府資金が多く投入される特殊な私立大学だ。公用語は英語で、40以上の国・地域からの約1100人が所属する。半分が博士研究員、学生は5年一貫の博士課程のみ。教員は18カ国・地域からの60人超。米カリフォルニア工科大学を模範とし、研究室予算もこれに匹敵する。

 教員採用の中心は、無期雇用に向けた若手の有期雇用「テニュアトラック」制度の准教授で行う。期間は通常より長い7年間の設定のため、失敗の可能性がある研究テーマにも挑戦できるという。年収も当初で800万―1100万円、米国ほどでないが日本では恵まれている。

 採用は学期始まりの4月に向けて書類選考、面接、トップレベル研究者が論文などを見る外部評価と進む。日本の一般的な大学ともっとも違うのは、採用通知を出した後だ。給与、研究費、研究のスペースや設備、博士研究員数など詰める。住まいや家族の仕事・学校の相談にも乗る。

 教員人事を担当する伊藤徹アシスタント・マネジャーは「『それは無理』と言うと他機関に行かれてしまう。長い時間をかけてここまで来たので『どのように変えれば期待に応えられるか』と根気強く交渉する」と説明する。それでもここでの“成功率”は8割ほど。欧米の著名大学でも公募が進む中、通知タイミングで失敗するケースもあったという。

 そこで、公募時期は夏秋半年にわたるが「海洋学は年末から動き出し、数学はかなり遅い」などの分野差に着目。18年度は教員らの助言で分野別に時期を絞り、論文雑誌など広告媒体を前年度比1・5倍の73件に増やした。世界の人材獲得では知名度や採用条件に各種ノウハウ蓄積を加えて、腕を競い合っている。
(文=編集委員・山本佳世子)

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日刊工業新聞2019年4月23日

山本 佳世子

山本 佳世子
04月27日
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破格の待遇だとOISTの噂は耳にしていたが今回、研究環境や年収など、具体的なところを取材することができた。政府はOISTで「ヒト・モノ・カネを世界トップクラスの研究機関と同等にすれば、日本でも研究力が格段に上がる」という仮説を試しているのだろう。しかしそれが正しいとしたら、日本に本拠地を置きながら日本人研究者は少数派、という大学を、続々と増やすべきなのだろうか。そう、米国社会やグローバル企業はすでに、その世界へ足を踏み入れている。グローバル時代の大学のアイデンティティーについて、考えずにいられない。

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