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自治体文書のデジタル化、正読率「90%超」達成で導入は進む?

NTTデータが実証
 NTTデータが自治体文書のデジタル化に取り組んでいる。夏にも地方自治体向けの戦略商材「AI―OCRソリューション」の提供を始める。事前に東京都町田市など6市と実施した実用検証では、正読率93・30%を記録し、各自治体の前向きな反応を得た。行政事務サービスを提供する地方公共団体情報システム機構のネットワーク「LGWAN―ASPサービス」から利用可能な状態を目指す。自治体が保有する大量の紙帳票をAI―OCRで読み込むことで、RPA(ソフトウエアロボットによる業務自動化)の活用幅が広がり、自動処理による業務効率化が実現しそうだ。

NTTデータは2017年度に茨城県つくば市とRPAの共同研究を実施。自治体のRPA活用が進まない課題として、大量に保管している紙帳票のデジタル化が困難なことなどが挙がった。

 大量の紙帳票のデジタル化には人手ではなくAI―OCRの活用が期待されている。AI―OCRとは、人工知能(AI)を活用した光学式文字読み取り装置のこと。収集した大量の文字データから文字の特徴をディープラーニング(深層学習)で認識する。

 漢字、カタカナ、数字、英語などの混在や文字枠なし、印影の重なりなどの場合も既存のOCRと異なり精度良く読み込める。NTTデータではAI inside(東京都渋谷区、渡久地択社長、03・5468・5041)のツール「DX Suite」を活用し自社設備(オンプレミス)とクラウドでAI―OCRソリューションを企業向けに提供している。

 NTTデータは18年12月から東京都町田市、福島県郡山市、千葉県市川市、茨城県つくば市、横浜市、福岡市と自治体向けAI―OCRソリューションの実用検証を実施した。

 各自治体の実帳票に職員が架空の名前や住所などを記載しAI―OCRで読み取った。検証では介護、広報、国民健康保険(国保)、税、選挙、会計・契約の申請書・証明書など73の帳票を対象に実施。約7万5000超の文字数を読み取り正読率は93・30%だった。

 結果について町田市では「読み取り率は良かった。驚いた」、郡山市も「システムの実用化できれば業務負担の軽減につながる」と評価する。NTTデータソーシャルイノベーション事業部の仁田光治統括部長は「有用性・実効性を確認できた。これを第一歩にして、さらなるソリューションを展開する。スマート自治体が未来の姿になる」と期待する。

 高い正読率は業務の一部をロボットが代替できることを示す。ダブルチェックの場合は初回はロボット、最終的には人間が確認する。これまで2人体制だった場合には1人分の労働力をさらに創造的な事業に振り分けられる。

 AI―OCRの活用はRPA導入の追い風になる。市川市では19年度にRPA導入予算を確保した。市川市企画部行財政改革推進課の森本豪氏は「具体的にはこれからだが、AI―OCRを組み合わせ、厳密な精度が求められないところから始めたい」と話す。RPAとAI―OCRを組み合わせた自治体の効率化は目の前に迫っている。
(文=川口拓洋)

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