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ユニクロに協和発酵キリン…大企業の初任給はどこまで上がる?

人事制度改革とセットで
ユニクロに協和発酵キリン…大企業の初任給はどこまで上がる?

ユニクロは来年に2割増の25万5000円に

 衣料小売り大手「ユニクロ」や「ジーユー」を展開するファーストリテイリングは3日、2020年の新入社員から大卒の初任給を25万5000円に引き上げることを明らかにした。19年の21万円から2割増やし、優秀な新卒学生の獲得を目指す。

 同社の初任給は外資系メーカーや総合商社と同水準になるという。入社2年目以降の社員の賃金も引き上げ、若手社員の間でバランスを取る。

 また協和発酵キリンは4月に人事制度を大幅改定した。優秀な新卒を確保する観点で、初任給を従来比1万3000円増額。管理職ではない正社員の昇格ルールについても、上位の等級へ進むために最低限必要な年数を短縮する。また、休暇制度の見直しを通じ、従業員に自らの心身の状態や、結婚・出産といった人生での出来事と主体的に向き合う意識を身につけさせる。一連の施策で社員の貢献意欲を高め、組織の生産性向上につなげる。

 初任給は国内製薬企業ではトップ級の水準となるように改める。既存の若手社員の収入と逆転しないよう、入社2年目の社員の給与も引き上げる。「報酬に対する満足度が必ずしも高くない課題があり、今後の成長を担う若手に賃上げの原資を重点配分する」(人事部門幹部)。

 管理職ではない正社員の昇格基準も見直す。従来、一つ上位の等級へ進むために最低限必要な年数は、4―5年だった。これを新制度では2年に短縮し、優秀な人材をより早く抜てきできるようにする。「(評価者は)今まで(被評価者の級が)上がった直後はある程度の評価にしておいて、(昇級に必要な年数の)要件を満たしそうになったら高い評価にしよう、との無意識が働いていたと思う」(同)。こうした問題の改善も図る。

 また、働き方改革の観点で休暇制度も刷新する。これまでは取得しなかった年次有給休暇を積み立てられる仕組みの運用をしてきたが、従業員が積み立てた分を使う際には人事部門へ書面での申請や報告が必要だった。今後は積立制度を廃止して「セルフマネジメント休暇」を導入する。

 この休暇は結婚や配偶者の出産、不妊治療などで休む際、年休とは別に使える。申請は上長とのやりとりだけで済む。ただし、不使用分を次年度に繰り越すことはできない。従業員が惰性で休暇の取得を先延ばしせず、自身の生活の状況を踏まえて能動的に休むようになる効果などが期待できるとみられる。

 2019年春闘交渉でベースアップ(ベア)に当たる賃上げ額平均(集計対象53組合中・36組合回答)は1373円と前年の1542円を下回る一方で、一時金は昨年を上回ったほか、企業内最低賃金や初任給を引き上げるケースが増えるなど、人手不足や「働き方改革」に向けた動きが強まっている。

 また少子化に伴い、新卒採用の現場では学生優位の「売り手市場」が続いている。大企業でも予定の人数を採用できないケースが相次ぎ、待遇改善などで学生を引きつける工夫を迫られている。
日刊工業新聞2019年4月4日の記事を加筆・修正

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