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日本のロボット軍事力、どこで生かす?

防衛省、自律走行型やパワードスーツ開発
 防衛省は防衛装備庁の先進技術推進センター(東京都世田谷区)で、多目的自律走行ロボットや高機動パワードスーツの研究を進める。ロボットでは飛行ロボット(ドローン)と連動した遠隔操縦式小型偵察システム、パワードスーツでは島しょ部などで重い装備品を背負って素早く動けるスーツなどを開発済み。中国の軍事力強化が進む一方、日本では若年人口減少を背景に自衛隊員を十分に確保できない状況が深刻になっており、ロボットの技術を活用する。

 自衛隊が使うロボットには、偵察や警戒など人間が行くには危険な場所での作業をはじめ、爆音や豪雨、震動といった悪環境下の自律走行、移動する障害物を自律的に回避できる性能などが要求される。

 自動運転や自律走行などのキーワードは民生品と同じだが、民生品がきちんと舗装された道路や全地球測位システム(GPS)の利用を前提とするのに対し、自衛隊のロボットが走るのは、岩だらけやぬかるみの地帯、電波の届かない建物内など。当然、地図などはない。「難易度のレベルが格段に違う」と担当者は指摘する。

 遠隔操縦式小型偵察システムは、電波の届かない環境を考慮してロボットとドローン、操縦者とのつながりに光ファイバーケーブルや中継器を用いる。ロボットとドローンは災害時における建物内の環境データや画像情報を収集するとともに、有事の際は敵兵が潜んでいるかもしれない場所の偵察に利用できる。無線操縦や、暗やみでも見える暗視カメラ、環境計測用センサー、熱画像センサーなどもポイントになる。

 爆発物対処用ロボットも開発している。遠隔操作により、地雷などの爆発物を破壊あるいは爆破処分するロボットだ。狭い場所での移動が容易な小型軽量タイプと高性能タイプがあり、高性能タイプは爆破処分用ハンドと別にアーム機構を備える。移動機構部は岩場などでも動けるクローラー式だ。地雷以外に、不審物の捜索作業にも利用できる。

 無線アンテナと有線ケーブルで指令し、放射能などで汚染された建物内の階段を上っていくロボットもある。これらロボットの活用で、自衛隊員の危険を減らせる。

 高機動パワードスーツは、重量負担の軽減や素早く駆け回るなどの機動性の要求性能が民間とは大きく異なる。尖閣諸島などの防衛戦の想定では、機関銃など合計50キログラム近くある装備品を装着し、岩ばかりの場所や砂地を動き回らなければならない。素早い動きのために、足部分にアクション機構の装着も研究しているという。

 中国やロシアでも、軍事ロボットや無人兵器の開発が進んでいる。レーダーやカメラ、センサー、人工知能(AI)を搭載した無人戦車やドローン、潜水艦などが研究されているという。専守防衛を基本とする日本も好むと好まざるにかかわらず、これらを意識せざるを得ない。
危険地帯で使うことが要求されるロボット

(文=嶋田歩)
日刊工業新聞2019年3月7日

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