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“減る中国”、業績インパクトが大きい製造業は部品?自動車?素材?

“減る中国”、業績インパクトが大きい製造業は部品?自動車?素材?

日本電産の永守会長(左)と日産の西川社長

 中国の景気減速はいつまで続くのか―。2019年3月期業績予想を直近で下方修正した主な製造業のうち、米中貿易摩擦やそれに伴う中国市場の減速などを要因に挙げた企業を見ると、電機・電子部品のほか、自動車関連、素材など広範囲に及ぶ。中長期的には中国市場が有望であることは間違いないものの、米中貿易協議の行方次第で今後の見通しは波乱含み。産業界は警戒感を強めている。

【電機・電子部品】「リーマン・ショックに近い」


 業績を下方修正した企業の中では、電機・電子産業が目立つ。

 米中貿易摩擦によって双方で関税を引き上げた影響などもあり、18年後半から新車販売数やスマートフォンの出荷台数など、中国経済の減速を示す各種等計が相次いでいる。

 営業利益見通しなどを下方修正した三菱電機は、産業メカトロニクスや電子デバイス部門で中国向け需要が減少した。皮籠石斉(かわごいし・ただし)常務執行役は、中国市場で「設備投資の見合わせも重なってきている」と懸念する。

 同じく営業利益見通しなどを引き下げたパナソニックも、中国向けスマホ製造設備用モーターやプラグインハイブリッド車(PHV)用車載電池、家電などの需要低迷が影響。シャープもスマホ市場の停滞と米中貿易摩擦の影響で、液晶パネルやセンサーなど電子部品の売り上げが低下し、通期見通しの2度目の下方修正を余儀なくされた。野村勝明副社長は、「19年1―3月期も電子部品の伸びは期待できない」と見ている。

 また、自動車や家電向け機器など、中国での顧客の需要減と大規模な在庫調整などを理由に下方修正した日本電産の永守重信会長は、「18年11、12月は経験したことがない落ち込み。46年間経営をやってきて、こんなに落ちたのは初めてだ」としたうえで、中国経済がさらに悪化すれば「リーマン(・ショック)に近い状況に世界経済が陥る。甘く見てはいけない」と警戒する。

【自動車】「長い目でみれば成長市場」


 中国は18年の新車販売台数で28年ぶりの前年割れとなるなど、自動車市場の先行きも不透明だ。

 日産自動車は米中市場で販売減を見込み、売上高や営業利益などのほか、中国での販売台数見通しも下方修正している。西川広人社長は「中国は少し踊り場」としつつ、「長い目でみれば成長市場」との見方は変えていないものの、当面は厳しい状況が続きそうだ。

 また、デンソーは中国での市場減速や原材料費の悪化などを要因に下方修正。特に中国内陸の都市部で現地車メーカーや米フォードモーターの販売減が響いているという。松井靖常務役員は「中国の減速が顕在化した」と話す。

 2度目の下方修正を発表したアイシン精機は、中国で現地や欧州メーカーの減速を受けて、変速機の販売台数予想を引き下げた。ジェイテクトは電動パワーステアリング(EPS)の採算改善遅れや、中国でのステアリング(操舵装置)販売減などを受けて下方修正。「中国地場メーカー中心に影響を受けている」(高橋伴和専務)。

【素材】「19年度後半以降に回復」


 中国での半導体やスマホ市場の失速は素材関連の業績にも影響を与えている。

 神戸製鋼所は、中国などでのアルミニウム製の板材の販売数量減などを理由に下方修正。UACJも、中国などでの半導体や液晶製造装置用のアルミ厚板のほか、パソコンなどIT機器向けのアルミ板の販売も予想を下回りそうだ。三菱マテリアルは、中国向けの半導体関連材料の販売減などを反映して下方修正した。

 ただ、半導体分野は調整局面が継続するものの、「19年度後半以降に回復しそうだ」(神鋼の勝川四志彦取締役専務執行役員)と見込む。

 一方の東レは、繊維部門の販売が中国や欧州で減速すると予想。ABS樹脂などの樹脂事業も中国市場で販売減を見込む。スマホ市場の失速で、関連するフィルム材料や電子材料の販売も減ることを想定している。

 財務省が20日発表した1月の貿易統計(速報値)では、中国向けの輸出額は2カ月連続の減少となる前年同期比17・4%減と大幅に下落。特に電子回路などの機器が同38・9%減、半導体等製造装置が同24・8%減とそれぞれ大きく減少している。

 ただ、各社を個別に見ると、例えば車載用電子部品でも電気自動車(EV)向けは落ち込んではいない。市場としての魅力は依然として健在である中国。各社は米中貿易協議を筆頭に外部環境を注視しつつ、難しい経営判断をしていくことになりそうだ。

アナリストの見方


<●大和総研シニアエコノミスト・神田慶司氏>

 世界経済全体としてはスローダウンしているものの、景気の腰折れなど、厳しい状況にはならないのではないか。中国も景気減速は避けられないが、昨夏ごろから政府が経済対策を打ち出し、金融緩和も進めているので、徐々に効果が出てくるはずだ。

 日本経済は内需の重要性が増す中、低成長が続く見込みだ。設備投資では人手不足対応や消費増税対応といった需要を見込めるが、日本経済のけん引役となるには、世界経済の見通しが明るくなるなど、外需環境の好転が不可欠だ。

 4月から働き方改革の一環で有給休暇の取得義務化などが実施される。働けないから売り上げが落ちることを避けるために新たな投資が生まれるかなど、経済に与える影響に注目したい。
                             


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日刊工業新聞2019年2月25日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
中国の国会に当たる第13期全国人民代表大会(全人代)第2回会議が5日、北京で開幕する。初日に李克強首相が政府活動報告を行い、19年経済目標を公表する。中国経済は18年の実質国内総生産(GDP)成長率が6・6%と、28年ぶりの低水準を記録。著しい経済減速を踏まえ、控えめの目標を設定するとの観測が強い。景気対策として大型減税などを打ち出す可能性もある。

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