元財務官僚が失敗の末にたどり着いた資産運用サービス

『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』著者登場

柴山和久氏(ウェルスナビCEO)インタビュー


―「投資の思考法」をテーマとして扱った理由を教えてください。

「老後に向けて資産を形成しながら安心感や豊かさを実感できれば良いが、多くの人はやり方が分からない、相談できる相手がいないといった理由で資産運用を始められないでいる。そうした人たちが抱える悩みは複雑で、簡単に解決はできないが、投資と向き合う方法を提示したいと考えた」

―銀行からの特別な扱いに舞い上がり、冷静な判断ができなかったなど、投資による自身の個人的な失敗が、後に自身で起業するきっかけになったとか。

「ごく普通の金融商品であっても、正しく活用しないと失敗してしまう。私が英国の財務省に出向していた時、滞在していたロンドンの書店で長期、積み立て、分散の資産運用についてのメリットを説明する本と出会ったことが大きな転機となった。ビジネススクール『INSEAD』でファイナンスについて学び、転職先のマッキンゼー・アンド・カンパニーで金融の最前線に触れながら、誰もが安心して利用できる資産運用サービスを作りたいと考えるようになっていった」

―資産運用に対する環境の違いも海外と日本とでは大きいと感じますか。

「私がマッキンゼーのニューヨーク事務所に勤務していた際、米国人である妻から両親の資産運用も見てほしいと頼まれ、その金融資産の額の大きさに驚いたことがある。妻の両親は普通のサラリーマンだったが、若い時から長期、積み立て、分散の資産運用をしていたことで、多額の資産を築くことができていた」

―日本と比べると、海外の人は資産運用に関する知識が豊富なのでしょうか。

「米国では、職場や家族で長期、積み立て、分散の資産運用による成功体験がある程度、共有されている面はあるのではないか。だからといって、金融リテラシー(活用能力)をしっかりと理解して成功している人は少数派だろう。周囲の成功や失敗の体験を参考にしながら、富裕層向けの資産運用サービスを活用するなどしていることが、日本との大きな違いだ」

―資産運用と上手に付き合うポイントは何でしょうか。

「資産運用を始めて間もないころは、リターンがプラスとマイナスを行ったり来たりしがちで、そのたびに一喜一憂して疲れ果ててしまいがちだ。それを乗り越えるとリターンが安定し、落ち着いて資産運用に取り組むことができる。こうした中で、投資が趣味というケースを除けば、富裕層の多くは自分で資産運用はせず、プロに任せてしまうケースが多い。資産運用でお金を守りながら、自分の時間や家族と過ごす時間など、もっと大切なことにエネルギーを注ぐためだ」

―これからの資産運用はどうなっていくと考えますか。

「これまでの日本では定年まで働き、年金や退職金で老後に備えることができた。ただ、終身雇用が崩れ始め、年金や退職金への不安も高まる中、働きながら資産運用することが求められるようになった。長期、積み立て、分散の仕組みや考え方を正しく理解しながら、資産形成を図ってもらいたい」
(聞き手・浅海宏規)

ウェルスナビCEO・柴山和久氏

◇柴山和久(しばやま・かずひさ)氏 ウェルスナビCEO
00年(平12)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。10年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。15年ウェルスナビを設立、CEO。群馬県出身、41歳。



『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』(ダイヤモンド社 03・5778・7240)

日刊工業新聞2019年2月25日

  

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