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英国のブレグジット、日本企業はどこまでリスク回避に動く?

 英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を3月29日に控え、英国での事業戦略を見直す日本企業が相次いでいる。工場閉鎖や生産計画の撤回、欧州本社の移転など、先行き不透明な英国経済に対応した動きが続く。英政府とEUがまとめた離脱案は議会承認の見通しが立たず、貿易障壁が高まる「合意なき離脱」となる可能性を払拭(ふっしょく)できない。英国経済、ひいては世界経済の減速を招きかねないだけに日本企業の警戒感が強まる。

【自動車】ホンダが工場閉鎖、日産は生産計画撤回


 自動車メーカーの英国事業見直しが相次ぐ。ホンダは19日、同国南部のスウィンドン工場の生産を2021年中に終了すると発表した。八郷隆弘社長は会見で「今回の判断にブレグジットは無関係」としながら「最終的にブレグジットの影響がどうなるか不透明」と不安をにじませた。

 日産自動車はスポーツ多目的車(SUV)の次期モデルを英国工場で生産する計画を撤回した。「英国とEUのあり方に見通しが立たない」―。同社のジャンルカ・デ・フィッシ専務執行役員のコメントは自動車各社の不安を象徴する。英国事業は「現状維持」か「縮小」しか選択肢がない状況だ。

 また3月末には「合意なき離脱」の懸念がある。各社は通関の混乱に備え、在庫積み増しなどを検討するが、「いくら準備しても影響なく乗り切るのは難しい」と白柳正義トヨタ自動車執行役員は表情を曇らせる。

【電機】ソニーなど拠点移転


 電機業界では英国のブレグジットを受け拠点の移転などに踏み切る企業もある。パナソニックは2018年10月、欧州の統括会社を英国からオランダ・アムステルダムに移転した。欧州事業は既にドイツ拠点が中心機能を担っており、業務上大きな変化はないという。ソニーは3月末に欧州本社の登記を英国からオランダへ移す。本社をEU圏内に置き輸出入業務などの煩雑化を避ける。英国の事業や人員は移さない。

 日立製作所は英国北部に鉄道車両の工場を持つ。西山光秋専務は「調達品にかかる関税が心配だが、国内でクローズできる体制を整えつつある。今は7割が国内(調達)」と話す。三菱電機はスコットランドの空調工場から同国外へ製品を輸出している。英国経済の不透明感やEUの経済減速を懸念しており、為替変動と併せて今後の動向を注視する。

【機械】各社、在庫増で備える


 英国に工場を持つ機械各社は「合意なき離脱」となっても大きな影響はないと見込むが、在庫積み増しなどで備える。ブラザー工業は買収した英ドミノの産業用印刷機器を欧州各国に輸出するが「関税上乗せは軽微なので工場移転は検討していない」。

 英国工場から欧州各国に工作機械を輸出するヤマザキマザックは「関税率や生産方式が違うため、自動車産業ほど影響は受けない」と見通す。部品の在庫を積み増す対策には取り組む。日本精工も英国で生産する車用軸受を中心に、オランダの倉庫などを活用し1カ月程度の在庫を積み増す取り組みを始めた。

 ジェイテクトは車向けにステアリング部品と軸受を年間100億円ほど英国で生産・販売する。うち、軸受は欧州各国に輸出する。工場移転は現時点では考えていないが、「自動車メーカーの動向を注視している」。
日刊工業新聞2019年2月20日

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