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RPAが設計・生産を変える!リコー「デジタル革命」の威力

間接部門だけではない
 リコーは、設計や生産などの直接部門にRPA(ソフトウエアロボットによる業務自動化)を適用する取り組みを本格的に始めた。RPAは経理や労務など主に間接部門での導入が多く、直接部門への適用は珍しい。リコーは設計など主力業務にもRPAを導入し、全部門における生産性改善を進めることで従業員の現場解決力を高め、競争力向上につなげる。

 リコーは、直接部門への適用で設計や製品ラインなどへのRPA導入に乗り出した。複合機の設計では温度上昇などの変化を実験するにあたり、条件設定とデータの取得の作業を自動で繰り返すソフトの開発に着手。設計の付随作業をRPAが担うことで、技術者はより付加価値の高い中核業務に集中できる環境を整える。

 リコーはRPAによる業務改善を「社内デジタル革命」と位置付け、2018年度から本格的に始動している。現場の従業員らが主体的となって取り組み、グループ全体で200以上のソフトを開発した。実際にリコー単体で月約1600時間、販売会社のリコージャパンは同5100時間も削減し、一定の成果を生み出している。

 間接部門への適用が一定程度進んできたことから、よりコアな業務である直接部門への展開を決めた。リコーは直接・間接と適用範囲を限定せずにRPAを活用することで、全部門における生産性改善につなげていく。
(日刊工業新聞2019年1月28日掲載)

現場のアイデア×専門技術者


 リコーがRPA(ソフトウエアロボットによる業務自動化)を活用した業務改革を進めている。“社内デジタル革命”と題した働き方改革の狙いは業務改善を常に意識する体質づくりにある。背景には現場の課題解決力を高めることが、やがて会社の成長にもつながるという考えがある。

 購買単価の分析データの作成、評価用プリントジョブ作成業務の自動化―。同社では現在、グループ全体で200以上のRPA用ソフトを開発し、多くの現場で運用している。

 そのほとんどが現場から生まれたアイデアだ。現場発の課題を外注で解決するのではなく、現場の従業員が関与することで、社内の業務改善に適したソフトを次々と生み出してきた。

 これらの取り組みを全社ベースで支えるのが、4人の技術者を含む専門部隊。RPA導入に向けた社内研修やソフト開発の教育、成果事例の発表会などを主導。現場のチームが自発的に業務改善に取り組める環境を整備しようと多岐にわたる支援を展開している。

 専門部隊と現場チームの連携もあり、リコー単体で月1600時間分もの業務削減に成功しているという。

 ただ、これらはあくまで手段。リーダーであるCEO室の浅香孝司室長は「業務改善で創出した時間を付加価値の高い仕事に生かすことが重要」と指摘する。働き方改革は現場の力を高め、やがては会社の成長にもつながる。従業員の現場力向上を通じ、企業のさらなる飛躍へとつなげていく。
(日刊工業新聞2019年1月23日掲載)

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日刊工業新聞2019年1月28日掲載
梶原洵子
梶原洵子 Kajiwara Junko 編集局第二産業部 記者
「RPA=間接業務の効率化」という固定イメージがあったので、驚きました。現場がアイデアを出し、専門技術者が形にするという形が効いていそうです。

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