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クルマの窓にも“iPhoneガラス”

米コーニング幹部に聞く、「CASE」時代の戦略
クルマの窓にも“iPhoneガラス”

コーニングのハロッズバーグ工場(アップル提供)

 CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる自動車分野の新潮流を受け、主要な部材の一つであるガラスにも新たな役割や使い方が求められている。特殊ガラス大手の米コーニングで自動車関連ガラス担当役員を務めるマイケル・クニゴニス氏に、CASEに対する同社の対応や戦略を聞いた。

 ―自動車のCASEの流れをどう認識していますか。
 「ディスプレーや光通信、環境技術など、当社が各事業で培ったビジネスの関係をCASEでも生かせると考えている。例えば、各国の主要通信会社やディスプレーメーカーとの良好な関係は、コネクテッドや自動運転の分野でも活用できる。スマートフォンのカバーガラスに使われている化学強化ガラス『ゴリラガラス』の経験も生かせる」

 ―ガラスではどんな提案が可能ですか。
 「外装用の窓ガラスでは、合わせガラスの1枚をゴリラガラスに変えることで大幅に軽量化でき、強度や光学特性も向上する。板厚が薄くなるので、ヘッドアップディスプレーとして使う際も情報を鮮明に映し出せる。内装用も同様にゴリラガラスを使うことで機能が向上する。2021―22年の時点で、車内のディスプレーは現状の一つから二つに増えるとの見方もある。高精細化も進む見通しで、防曇や反射防止といった当社の技術の知見を生かせるはずだ」

 ―内装用のガラスでは、他の内装部品とのデザインの調和も求められそうです。
 「車内のデザインは曲面や曲線の形状が多く、ディスプレーに対しても曲面や異形の要求が強まっている。当社は熱をかけることなく高品質に強化ガラスを曲面成形する技術を持っており、顧客の求めるデザインに合う状態に加工できる」

 ―内装用の需要拡大を見すえた量産体制の整備も必要ですね。
 「中国の安徽省合肥市に自動車内装用ガラスの工場新設を決めた。スマホやタブレット端末を使いこなす世代は、それと同じ感覚を車にも求める。また米国では後方確認カメラの搭載を義務付ける規制が始まり、車内のディスプレーが最低でも一つは必要になる。それだけに、内装用ガラスの採用は決して高級車種に限った話ではなく、大衆車の領域でも採用が拡大すると考えている」

【記者の目】
 ゴリラガラスは07年に米アップルの初代「iPhone(アイフォーン)」に採用されて以降、スマホやタブレット端末など60億台以上の機器に搭載された実績を持つ。自動運転や常時ネットワーク接続などの技術の進化でクルマの「スマホ化」が叫ばれる中、自動車分野でも同様の地歩を築けるか。商機獲得へ腕の見せ所だ。
米コーニング担当役員のマイケル・クニゴニス氏

(文=斉藤陽一) 【関連記事】 自動車ガラス加工、知られざる実力企業
日刊工業新聞2018年12月28日

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