米国で処理速度100倍のスパコン開発プロジェクト、オバマ大統領が宣言

産学連携により「ムーアの法則」超える半導体技術も

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6月のスパコン世界ランキング「TOP500」で2位、27ペタフロップスのピーク性能を誇る米オークリッジ国立研究所の「タイタン」。後継機として2017年には5倍以上の処理能力を持つ「サミット」が導入予定(同研究所のウェブサイトから)
 現在のスーパーコンピューターの約100倍の処理速度を持つ次世代高性能コンピューター(HPC)を開発せよ。米国のオバマ大統領がこうした内容の大統領令に7月29日、署名した。1秒間に1兆の100万倍回の浮動小数点演算(エクサフロップス)を行う「エクサスケール」のスパコンの開発や導入を進めるもので、そのための政府戦略をコーディネートする中核組織として「国立戦略コンピューティングイニシアチブ(NSCI)」の発足も盛り込んだ。

 現在のスパコンの処理速度は10ペタフロップス(ペタは1000兆)程度。こうしたHPCの開発のペースがだんだん鈍ってきており、さらに米国がほかの国に遅れをとっていることが、大統領令の背景にある。中国や日本などは、2020年までにエクサスケールのスパコンを作ろうとしている一方、米国では現在のところ、早くても2023年になる見通し。そこでエクサスケールの次世代HPC実現に向けて、産学連携でハードウエアおよびソフトウエアの研究開発を加速させるとともに、政府・民間への導入を進めることで、米国の経済競争力の強化や科学的発見といった国益につなげる狙いがある。
 
 2番目の目標が、HPCを支える半導体技術の限界を打ち破ること。2年ごとに半導体チップに詰め込むトランジスタの数が2倍になるという「ムーアの法則」が提唱されてから、今年は50年の節目の年に当たる。だが、微細化が限界近くに達し、これ以上集積度を向上させるのが難しくなってきている。NSCIでは向こう15年にわたって、ムーアの法則を超える「ポスト・ムーアの法則時代」の新しい半導体技術の道筋も探る。

 一方、中心となるNSCIは、米国にとってHPCがもたらす利益を最大化するため、次世代HPCにかかわる複数の省庁にまたがる戦略ビジョンや政府の投資戦略をまとめ、産学連携での研究開発を実施する役割を担う。

 大統領令によれば、NSCIで次世代HPCのハードウエアとソフトウエアの研究開発、および人材開発面で主導的な役目を果たす政府機関として、エネルギー省(DOE)、国防総省(DOD)および全米科学財団(NSF)の3つを指定。科学的発見など基礎的な研究開発を担当する機関は、国家情報長官直轄の情報研究機関である情報先端プロジェクト活動(IARPA)と、米標準技術局(NIST)の2つ。さらに、ユーザーとして実際の任務に基づく次世代HPCの要求事項を開発する設置機関には、米航空宇宙局(NASA)、連邦捜査局(FBI)、国立保健研究所(NIH)、国土安全保障省(DHS)および国立海洋大気庁(NOAA)の5つが割り当てられる。

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藤元正
モノづくり日本会議実行委員会

米国ではオバマ政権のもと、脳研究や積層製造(3Dプリンター)、デジタル製造・設計、パワーエレクトロニクスなど、連邦政府主導の産学連携プロジェクトが次々と立ち上げられている。NSCIは次世代HPCとそれを支える半導体技術を含めて、国をあげて開発しようという意欲的な試み。波及効果も大きいと思われるが、果たしてブレークスルーなるか。

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