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アライアンス見直しのカギになる「ルノー・日産BV」という存在

メディアの報道に若干の誤解
アライアンス見直しのカギになる「ルノー・日産BV」という存在

左からルノーのボロレCEO代理、日産の西川社長、三菱自の益子CEO

 日産自動車、三菱自動車、仏ルノーは29日、3社連合を主導してきた日産元会長のカルロス・ゴーン容疑者が逮捕されてから初の3社トップによる協議をオランダで開き、「各社は引き続きアライアンス(戦略提携)の取り組みに全力を注ぐ」との共同声明を発表した。ゴーン容疑者の退場で提携関係の土台が揺らぎかねない状態だったが、まず3社トップが連合の維持を確認し再スタートを図った形。ただ資本関係見直しなどで対立の火種はくすぶる。

 協議は日産とルノーが折半出資する連合の統括会社「ルノー・日産BV(RNBV)」(アムステルダム)で開いた。電話会議システムも活用し、日産の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)、ルノーのティエリー・ボロレCEO代理、三菱自の益子修会長兼CEOが会談した。トップ会談後に、RNBV役員らによる定期会議を行った。

 ほかに共同声明では「3社の取締役会は、一貫してアライアンスの強い結束を維持することを強調してきた。この20年間、他に例をみない成功を収めてきた」などとした。

 一方、ある日産幹部は3社トップの会議内容には言及しなかったが、トップとしてRNBVを独占的に取り仕切ってきたゴーン容疑者がいなくなった点、同社には三菱自が出資していない点などを挙げ、「具体的な議論はまだ先になるが、RNBVはアライアンスの全てではなく、こだわる必要はない」と語った。ゴーン容疑者の退場を契機に、3社連合の戦略策定や運営の仕組みを大幅に見直す可能性を示唆した。

 ただ同社トップはルノーCEOが就く規定があり、ルノーの筆頭株主である仏政府のルメール経済・財務相は25日、「ルノーCEOが連合トップであり続けるべきだ」とクギを刺した。一方、日産は同規定の見直しも選択肢にあるとの考えを示している。

 ルノーは日産に43・4%出資し議決権を有する一方、日産のルノーへの出資は15%に留まり議決権はない。仏政府の意向を受けて支配力を維持したいルノーと、「対等な関係」の構築を目指す日産は対立しており、出資関係の見直し議論がどう展開するかも今後の注目点だ。
中西孝樹
中西孝樹 Nakanishi Takaki ナカニシ自動車産業リサーチ 代表
メディアの報道には若干の誤解があるようだ。日産とルノーが対等出資するアライアンス統括会社であるルノー・日産BVのアライアンスボードの会長がルノー・日産の統治力を有するかのような意見もある。資本は「親子」関係でも、アライアンスは対等な「精神」で進めるというのがこの2003年に設立されたルノー・日産BVである。ルノーのCEO、2017年まで日産CEO、その後は取締役会を支配する日産会長を兼務してきたゴーン氏が、ルノー・日産BV会長に座っていたからこその統治力だ。ゴーンが去り、ルノー・日産の資本関係の見直しが起こるのであれば、ルノー・日産BVでアライアンスを進める仕組みが変わっていく可能性は大いにある。

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