批判の声はあるが…4国立大出資のベンチャーファンドに初の2号案件

東北大学ベンチャーパートナーズが立ち上げへ

 東北大学ベンチャーパートナーズ(THVP、仙台市青葉区、吉村洋社長、022・224・5861)は、2019年度後半に2号ファンドを立ち上げる方針を固めた。東北大からの約50億円に加え民間金融機関から出資を募り、約80億円で設定する。投資対象は北日本エリアの国立大学の案件に拡大する。すでに山形大学と投資案件発掘で協力を始めた。政府による4国立大のベンチャーキャピタル(VC)出資事業で、2号ファンドの具体的な計画は初めて。

 THVPは東北大学の完全子会社のVC。1号ファンドは東北大の研究成果によるベンチャーへの投資が中心だったが、2号は東北から北海道、新潟、北関東での新産業創出を視野に入れる。東北経済連合会や東北経済産業局と連携したプラットフォームを構築、対象エリアの大学との関係を強化していく。

 国立大のVC出資事業は東北大のほか東京大学、京都大学、大阪大学が進めている。THVPは政府の出資金125億円のうち70億円を使い、金融機関8社の資金と合わせた96億8000万円の1号ファンドを15年8月に立ち上げた。

 他大学と比べ、ファンド立ち上げが早く規模が小さいことから、投資実績も多い。8月末時点で13社32億円弱(追加投資含む)と全体の約3分の1を活用済みだ。分野別では材料、エレクトロニクス、IT・サービス、医薬が各3社で機械が1社。同大の材料とエレクトロニクスの強みが生かされている。

 19年半ばには新規投資を完了し、それ以降は追加投資となる見込みだ。そのため次の新規投資に回す2号ファンドを、政府出資金の残りを使って立ち上げる。

キーワード/4国立大出資の2号ファンド


Q 4国立大学によるベンチャー支援の出資事業「官民イノベーションプログラム」に批判があったのでは。

A 2017年度に政府の官民ファンド全体が「投資が遅れている。国の資金が生かされていない」と問題になった。4大学の1号ファンドは、約3年で3割程度の投資実績だ。利益回収まで15年間など長期計画だから「想定内の進展状況だ」との声もある。

Q トピックスは。

A 大阪大学発のベンチャーが上場するなど、成果事例もある。東北大学では1号ファンドの投資完了のめどがついたことから、THVPによる2号ファンドの検討という次の段階に進んだ。

Q 2号ファンドはどんな形になるのか。

A 官主導から民主導にシフトすることが求められている。そのため1号よりも、金融機関や事業会社など民間からの出資が増える形になるだろう。国立大の運営費交付金は法人化以降、計約1400億円減となっている。一方で同事業には計1200億円が投入されている。それだけにベンチャーによる社会活性化と、大学改革の先導で頑張ってほしいね。

 

日刊工業新聞2018年10月25日

山本 佳世子

山本 佳世子
10月27日
この記事のファシリテーター

総額1200億円もの政府資金で、4国立大学だけを支援する。この国立大VC出資事業は、極端な大学支援の「選択と集中」の事例といえる。そのため他大学からを含め、嫉みも混じった批判の声は、今なお続いている。同事業はすぐに成果を問えるものではない。阪大のVCの投資先ベンチャーが幸いにも上場したが、これは
上場間近の案件に投資してのイレギュラーなケースだ。「大学の技術を元に創業前後から、大学がVCと力を合わせて育てていく」という理想の姿は、まだまだ時間をかけて築くことになる。それだけに同事業の状況を、末永く、取材を通して注視していきたい。             

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