豊田合成副社長が語るGaNパワー半導体の勝算

橋本正一氏インタビュー

 豊田合成が、2020年代前半の量産化を目指して窒化ガリウム(GaN)のパワー半導体を開発中だ。パワー半導体は電圧変換などに使われ、今後の市場拡大が見込まれる。現在主流のケイ素(Si)に代わる次世代半導体を巡っては炭化ケイ素(SiC)が実用化で先行するが、同社は強みを持つGaNの技術を生かして新市場を開拓する考え。橋本正一副社長に今後の取り組みなどを聞いた。

 ―なぜGaNのパワー半導体に注目したのですか。

 「当社は1980年代から青色発光ダイオード(LED)の開発を手がけ、照明や車載向けなどに供給してきた。GaNはそのLEDの主な材料として使われている。結晶成長のノウハウなどを生かし、GaNデバイスの新領域としてパワー半導体を開発している」

 ―他社との差別化のポイントは。

 「既にSiCや横型のGaNデバイスが実用化されつつある中、差別化のために電気を基板に対して縦に流す『縦型GaNパワー半導体』を開発中だ。GaNの電力損失は、Siと比べて10分の1、SiCと比べても2分の1と低く、GaNを使うことで半導体デバイスの小型化などにつながる。また『縦型GaN』は『横型GaN』に対して高出力・高周波用途に向いており、新しいパワー半導体の市場を開拓できると考えている」

 ―具体的にはどんな用途がありますか。

 「産業機器、送電システム、モビリティー分野などさまざまだ。今春の展示会に試作品を初出品した。低損失のスイッチングデバイスとして、また横型GaNでは出せないパワーを出せるデバイスとして用途開拓を始めたところだ」

 ―量産化のめどは。

 「現在は事業としてようやく“入り口”に立った状態。コストや信頼性といった課題を乗り越え、21年頃に4インチサイズの基板で市場に参入したい。量産に向けては電機、半導体メーカーなどとの協業を考えている」

 ―GaN研究には国も積極的に取り組んでいます。

 「7月には名古屋大学にGaN研究の新拠点が完成した。オールジャパンの研究体制が整いつつあり、当社もその一員として、独自技術を含め貢献していきたい」
豊田合成副社長・橋本正一氏

(聞き手=杉本要)

日刊工業新聞2018年9月18日

杉本 要

杉本 要
09月18日
この記事のファシリテーター

豊田合成は自動車の内外装やエアバッグが主力。後にノーベル物理学賞を受賞する赤崎勇名城大学終身教授の指導を受け、1980年代からGaNの青色LEDの開発に着手した。当時から車の計器盤(インストルメントパネル)周辺のLED化などを目指していたという。LED事業は現在、市場の成熟などもあって赤字だが、GaNの結晶成長の技術をてこに、パワー半導体など新市場の開拓を目指す。特に、SiCと比べた場合の優位性を打ち出せるかどうかが、ポイントとなりそう。

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。