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地域住民がAIによる問い合わせサービスを自治体に求める理由

三菱総合研究所が19年4月に本格展開
地域住民がAIによる問い合わせサービスを自治体に求める理由

スマホで表示した問い合わせ対応サービス特設ページ(イメージ)

 三菱総合研究所は、人工知能(AI)による住民問い合わせ対応サービスに着手する。2019年4月から本格展開する考えで、10月から半年間実証実験を行う。子育て支援やゴミ出しルール、税金に関連など、住民が知りたい情報や質問への回答を、AIとのチャット方式で提供する。多くの自治体は職員の減少と、高齢化や法制度複雑化に伴う仕事量増加の板挟みだ。課題をAIで解決する。

 「自治体職員の仕事は、住民相談や問い合わせへの対応が過半を占める」。三菱総研の村上文洋主席研究員は指摘する。役所では多くの職員が相談対応に時間を取られ、対応待ちの長い行列ができている。三菱総研が18年10月から試行するAIサービスは、同年2月に35自治体と行った実証実験がベースだ。実験時は妊娠・出産や子育て、結婚、引っ越し、住民票・印鑑登録、防災、防犯など26分野を選び出し、AIのスタッフ総合案内サービスに回答させた。例えばゴミ出しルールで「段ボールの分別」と入力すると、AIのキャラクターが「資源ゴミだよ」などと回答する仕組みだ。

 実験後、利用住民の93・7%が「サービスを継続してほしい」と答え、理由を「24時間使える」「窓口で相談するより気楽」とした例が多かった。高齢者は役所に行くにも負担が大きい。電話で聞くのも億劫(おっくう)なようだ。AIの回答率は開始当初60%前後だった。学習機能で約1カ月で95%前後になり実用化のめどがついたという。

 ただ「わかりません」とAIが回答したケースもある。「お勧めの観光スポットは?」「テニスコートを予約したい」「認知症の相談席を知りたい」などの質問だ。三菱総研は回答方法の改善余地があるとする。

 自治体の利用料金(消費税抜き)は初期費用100万円、月額利用料10万円など。住民からの問い合わせは各自治体とも共通内容が多く、ここを標準化することで導入コストを引き下げ、自治体の負担を減らして普及を加速させたいという。

 AIの導入で、自治体職員の業務負担が軽減できる上、住民からの問い合わせ内容をデータで蓄積でき、行政サービスの向上に役立てられる。三菱総研は電子申請サービスや電子マネーと連携させることも考えている。例えば、市民用テニスコートの空きを確認し、その場で申し込みと料金の払い込みができれば、利便性は高い。
(文=嶋田歩)
日刊工業新聞2018年9月12日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
AIの利点が自治体に理解されれば、利用はさらに増えそうだ。 (日刊工業新聞社・嶋田歩)

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