国際派シニアを若手研究者の良きメンターに!文科省の狙いとは

若い頃、海外研究室に行っていた教員を減らす

 文部科学省は2019年度から、日本の科学技術の国際競争力強化に向けた若手研究者支援で新規に2事業を始める。若手が世界トップクラスの研究機関に渡航し、先端研究コミュニティーで人的ネットワークを構築できるよう、国際派のシニア研究者をメンター(助言者)として若者に付ける。国際共著論文の引用増などが期待できる。また海外での研究費獲得や主要な国際誌での論文掲載など、世界水準の研究マネジメント能力を養うための研修プログラムを開発、普及させる。19年度予算概算要求で計約11億円を計上する。

 「国際競争力強化研究員事業」は、30代後半など若手研究者が世界の研究コミュニティーの中核に位置する大学・研究機関で、将来にわたって日本に好影響をもたらす有力研究者とのネットワークを形成するのが目的。国際共同研究や国際学会などで経験豊富なシニア研究者が、学会時に出向いて若手研究者を著名研究者に紹介するなど後押しする。

 国際コミュニティーで日本人の存在感が高まれば国際共著論文の引用や国際共同研究の新企画が早期に可能になることが期待され、日本の競争力が高まる。新事業は90人の若手研究者を5年間(海外3年間)支援し、初年度は5億4000万円の予算を要求する。

 一方、世界水準の研究マネジメント能力を養うため、国内の大学・研究開発法人やそのコンソーシアムは、研究推進スキル向上のためのプログラムを開発する。また外国人研究者や帰国者、異分野・異機関の20人程度が切磋琢磨(せっさたくま)する場を通じた育成モデルも確立する。研究費獲得の書類作成や論文投稿、研究マネジメント、社会への成果発信などのスキル習得に加え、超スマート社会「ソサエティー5・0」で新領域を開拓できる人材を育成する。

 スキルはかつて講座制の研究室ごとに伝授されていたが、国際競争力強化に向けて組織的なシステム整備が必要と判断した。年1億円強で10年間、初年度は4機関を支援。これらを標準育成プログラムにまとめる委員会も設置する。19年度概算要求では5億7000万円を計上する。
                    

日刊工業新聞2018年8月23日

山本 佳世子

山本 佳世子
08月24日
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「若い頃、海外研究室に行っていた(だけ)」という教員は、研究型大学でも少なくない。席を置いた研究室の大ボスはとっくに退職している。研究者個人としての経験として意味はあるものの、その後の大学の国際化推進にはつながらないというジレンマがある。従来型での海外派遣では、同じ形が続くだけだ。それだけに国際派シニアを後ろ盾にした若手海外派遣の新事業は、「若手を将来にわたって先進国の研究ネットワークに食い込み続けるキーパーソンに育てる」という点で意味がある。シニアの中には国際学会の会長職を務めたり、国際的な賞を受賞しエグゼクティブと交流を深めたり、という人材がいる。そういったシ
ニアに一肌脱いでもらうことは意義深い。

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