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「シェアハウス」倒産にみる不動産業界の“変調”に要注意

サブリースモデルに逆風、地銀が中小へのリスク・マネー供給に消極的
「シェアハウス」倒産にみる不動産業界の“変調”に要注意

スマートデイズの倒産が意味するのは…(写真はイメージ)

 シェアハウス「かぼちゃの馬車」運営のスマートデイズ(東京都中央区、4月9日民事再生)の倒産は、大きな話題となった。影響を受けているのは同業者だ。昨年、破産した旅行業者のてるみくらぶや結婚式場運営のBrilliaなどもそうだったが、社会的な注目を集めた企業の倒産は「同業者の事業環境や資金調達を確実に悪化させる」(商社の審査担当者)。顧客や取引先、金融機関から警戒感を持たれるからだ。

 金融機関がオーナーに物件の取得資金を融資、運営会社が物件を一括で借り上げ、オーナーは家賃収入を保証されてこれを支払い原資に借入金を返済する一括借り上げ/サブリースのビジネスモデルを持った多くの不動産業者にとっても逆風だ。

 長期の家賃保証をうたい文句にしたアパート、マンション経営は借り入れを起こすことによる節税や相続税対策に有効なこともあって富裕層のみならず地方の高齢者の人気も集め、マイナス金利下の利ざや縮小に悩む金融機関にとってもこれらの不動産融資が格好の受け皿となってきた。

 しかし、一方では定期的な家賃の更新があり、空室や老朽化で値下げを余儀なくされること、メンテナンスや補修の費用がかさむことなどのデメリットも指摘されている。

 今回はサイド・ビジネスとして不動産経営を手がける“サラリーマン大家”の存在が注目を集めたが、「すでに融資が降りにくくなっている」(地方銀行)と言い、影響が出始めているようだ。

 約1年前、一部の地銀が中堅・中小企業へのリスク・マネー供給に消極的で外債投資や不動産融資へ傾斜していることが問題視され、金融庁が抑制に動いたことも背景にはある。

 現在、不動産業界は五輪関連の特需でホテルや大規模商業施設の建設ラッシュが起こり、オフィスビルも好調そのもの。「不動産業界全体としてみると、特別に警戒を要する水準には達していない」(政府関係者)とみられている。

 ただ、あまりに価格が高騰したマンション分譲や一戸建て住宅では販売不振や在庫の問題があり、年明け以降、実際にいくつかの企業について先行きを不安視する声も上がり始めた。スマートデイズの倒産が意味するのは、不動産業界で出始めた変調の兆しであるかもしれない。
(文=帝国データバンク情報部)
日刊工業新聞2018年5月8日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
スマートデイズが経営破綻した問題で、スルガ銀行(静岡県)は融資の焦げ付きに備える「引当金」を積み増し、2018年3月期決算で損失として計上するという。シェアハウスのオーナーの大半はスルガ銀から融資を受けているが、損失は数百億円規模に上る可能性がある。今後、地銀の不動産関連の隠れ負債がどれだけあるか、徐々に明らかになっていくだろう。

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