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アルミ加工の試作で米国市場の扉を開けた中小企業

日本の「当たり前」強みに取引先拡大
 「米国市場の扉を開けることが狙い」(山本昌作副社長)と、アルミ加工を得意とするヒルトップ(京都府宇治市)は2014年4月、念願の米国工場を立ち上げた。せいぜい数個単位という少量の生産を請け負う試作事業がどこまで米国で受け入れられるのか。本格稼働してからまだ4年で、取引先はすでに500社を超えたという。

 米国工場のヒルトップテクノロジーラボラトリー(カリフォルニア州)は、ロサンゼルス郊外のアーバインで操業する。多面パレットの大型5軸マシニングセンター(MC)1台に、一般的な5軸MCと3軸MCがそろったのは14年夏ごろで、現地採用の7人を含めた10人体制でスタートした。

 当初から日系企業の仕事は確保していたが、「(米国企業はヒルトップが)どれぐらい実力があるのか様子見していたようだ」と山本副社長が振り返るように、進出時には現地企業との取引で試行錯誤を余儀なくされた。

 しかし、軌道に乗るのにはさほど時間はかからなかった。「日本での仕事より少しプラスした価格設定で、受注率は80%。リピートオーダーも出始めた」(山本副社長)。アーバインやロサンゼルス、サンディエゴなど南カリフォルニアのさまざまな製造業から注文が舞い込む。北カリフォルニアからもサンノゼなどシリコンバレーの企業などから引き合いがある。
ロサンゼルス近郊・アーバインの拠点
 
 2015年には旋削もできる複合5軸MCを新たに導入し、工場は早くも手狭になってきた。直近の売上高は月間5000万円程度に達した。本体の売上高が18億円(17年3月期)のヒルトップにとって少なくない額だ。

 受注した試作を設計し、加工プログラムを組むのは国内の本社のエンジニアだ。米国で行うのはMCによる加工だけで、いわゆる職人技には頼らない体制にしている。

 「職人だと求められた品質を100点とすると180点にも200点にも作り込んでしまう。当社は120点ぐらいで仕上げるから、MCの操作も標準化できる」と山本副社長。コストを引き下げるとともに、現地では2週間で当たり前の納期も1週間で仕上げるなど、「QCD(品質・コスト・納期)ではまったく負けない。納期をしっかりと守るという日本では当たり前のことも強みとなっている」(山本副社長)と自信を深めている。
 
 製造業の海外移転が進み、試作などに特化したモノづくり企業でも、縮小する国内市場でパイを奪い合い疲弊している。試作専業企業が米国へ進出した例はまれだ。「FS(企業化調査)だけで終わってしまうところが多いが、当社はすでに2億5000万円ほど投資した。要は、そこでモノを作るという覚悟があるかどうか」と山本副社長は言い切る。2017年11月、ヒルトップはシリコンバレーにも営業拠点を設立。今後、世界のトップレベルの試作を積極的に獲得する体制を整えている。


「試作市場」&「微細・精密加工技術展」に出展


 日刊工業新聞社は5月10日(木)と11日(金)に、大田区産業プラザPiO(東京都大田区)にて「試作市場2018」および「微細・精密加工技術展2018」を開催する。微細加工と超精密加工に特化しつつ試作加工を強みとするモノづくり企業が集うのが特徴。例年、実際に試作加工を依頼したいというマインドを持つ現場技術者が多数来場し、会場内で図面を通じての“ガチンコ”の交渉がなされるなど、他展にはない熱気に溢れている。また、それゆえに成約率も高く、出展社と来場者ともに満足度が高い点も特徴にあげられる。

 特別講演では、2000年代にデジタルモノづくりのけん引役となったインクスに在籍し、現在はバーチャルエンジニアリングを主導するEPLAN Software & Servicesの井形哲三氏が登壇。3Dデータを中核としたバーチャルエンジニアリングの世界的な動向に触れつつ、デジタルエンジニアリングと試作加工の融合による、新たな”擦り合わせ”によるモノづくりを紹介いただく。今後のバーチャルエンジニアリング時代における試作加工のあり方を発信する。

出展企業と見どころ紹介


「ヒルトップ」
 365日24時間、多品種・単品・無人稼動の実現により、最適・最短の工程を構築。複雑な形状もスピーディー且つ、高精度な加工を可能にしている。微細・精密加工技術展では、こうした技術を駆使して製作した機械加工品の展示を始め、新時代IoTを創造する自動搬送ロボットの表示などを多数展示する。
 ヒルトップ

「松下製作所」
 金型内でカシメ工程を追加し工数削減に成功。通常、金型には材料1枚を投入するが、2枚投入し2部品を1型で製作してカシメる。従来品のコストより半額になった実績あり。微細・精密加工技術展では現物品を展示する。
 松下製作所

「ハシバモールド」
 石膏鋳造・焼失鋳造は、試作・小ロットの製作に向いていて、複雑形状・突然の設計変更にも対応可能。ダイカストに迫る精度部品を短納期で提供する。特に、新技術である焼失鋳造は更なる短納期化、設計の自由化を実現。3Dプリンター品のメタルコピー技術としても採用されている。材料は主にアルミニウム合金とマグネシウム合金。軽量化・高伝導部品として多く利用され、その中でも特殊材を含めた様々な材料提案が可能だ。

 機械加工では5軸マシニングを取り揃え、複雑な三次元形状にもスピーディーに対応。高強度材・難削材の加工対応も積極的に受け付けている。また、精密鋳造品の二次加工としての連携により、機密性・短納期化への特化を図る一貫した生産ラインを構築している。
 ハシバモールド
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
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