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ロボットが主人公のオペラ、ベルリンで上演

「人は何に人間性を見出すのか」観客に問いかけ
ロボットが主人公のオペラ、ベルリンで上演

ロボットの「マイヨン」(ベルリン・コーミッシェ・オーパーのサイトから)

 ロボット歌手がオペラに登場。ドイツ・ベルリンの歌劇場ベルリン・コーミッシェ・オーパーで5日、欧州連合(EU)のプロジェクトの一環として開発された自律ヒューマノイドロボット「マイヨン(Myon)」が主人公のオペラ「マイ・スクエア・レディ」が上演される。予告映像を見る限り、ぎこちない動きだが、劇の進行通りに動作したり、ステージをすり足でゆっくり歩いたり、ほかの出演者やオーケストラに合わせて歌まで歌うという。

 「マイ・スクエア・レディ」はブロードウェイ・ミュージカルの古典ともいえる「マイ・フェア・レディ」をもじったタイトル。リハーサルに2年間かけたという。花売り娘のイライザがヒギンズ教授に上流階級の淑女の作法を教え込まれ、やがて一人の人間として自我に目覚めていく「マイ・フェア・レディ」のストーリーを下敷きに、「何が人を人たらしめるのか」「人は何に人間性を見いだすのか」という哲学的な問題を、ロボット歌手を通じて観客に問いかける実験的な試みとなっている。

 マイヨンは自律ロボットの認知機能や言語機能の研究開発を目的に、ソニーコンピュータサイエンス研究所(パリ)も参画するEU主導のプロジェクト「ALEAR(Artificial Language Evolution on Autonomous Robots)」の一部として、フンボルト大学ベルリンのニューロロボティクス研究所が開発。ケルンのデザインスタジオ「フラッケンポール・ポールハイム」がロボットの外観をデザインし、バイエルマテリアルサイエンスが素材を提供した。

 マイヨンがユニークなのは、頭部、胸部、両腕、両脚の6つのパーツから構成され、それらを自由に分解・合体できるモジュラー型ロボットであること。各モジュールで独立した電源を持ち、それぞれが自律的に駆動するようになっている。全身の自由度は32あり、それを48個のアクチュエーターで動かす。大きさは身長1.25m、重量16kg。

 オペラは独英のパフォーマンスアート集団「ゴッドスクワッド」が共同プロデュース。上演時間2時間45分。詳しくはベルリン・コーミッシェ・オーパーのサイトまで。
http://english.komische-oper-berlin.de/schedule/my-square-lady/764/#
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藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
「マイ・フェア・レディ」の原作はバーナード・ショーの「ピグマリオン」。自ら彫刻した理想の女性の像を好きになり、女神に命を与えられた像を妻にしたというギリシャ神話を元ネタにしている。研究が進めば、いずれSF映画「her/世界でひとつの彼女」のように、ロボット(この場合は人工知能)に人間性を感じるどころか、恋をするような未来がやってくるのだろうか。

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