工作機械業界、生き残りへプロフェッショナル化とシェアリング

モノづくりの技は高い専門性と技術、一方で工作機械版の米ウーバー

シチズンマシナリーが提示した10年後の工場(同社提供)
 モノづくりの仕組みが変わる中、「マザーマシン」である工作機械も進化を迫られる。完全自動化やシェアリングといったトレンドは工作機械業界にも訪れる。一方でモノづくりの技は高い専門性と技術を持つプロフェッショナルの世界へと先鋭化しそうだ。

 「素人の入り込む余地はまったくなくなっているだろう」。森雅彦DMG森精機社長は2050年の金属加工業界をこう見据える。モノづくりをきわめていけば加工対象物(ワーク)の精度、品質、信頼性の要求が一段厳しくなり、専門性の高い企業しか生き残れない。

 材料も「金属はなくならないものの、複合材など新材料が増えるだろう」と三菱重工工作機械(滋賀県栗東市)の佐郷昭博取締役は見通す。自動運転技術の発展で安全性が高まれば、自動車の外板も一部は鋼板ではなく樹脂で事足りるとも考えられる。

 森社長は取り扱いが難しい材料のワークが増えることで「完全な無菌、真空状態でつくるようになる」と指摘する。プロフェッショナルな世界になるゆえに、テナントビルに機械を並べたお手軽な駅前工場の出現など「うそ」と完全否定する。

 数値制御(NC)装置の開発者だった金子雄二ソディック社長は「工作機械の制御も変わるかもしれない」とみる。メーカーの持つサーバーから顧客の何百、何千台の工作機械を制御するクラウド的な仕組みができれば、顧客は機械の導入コストを削減できる。

 プロフェッショナルの世界と並行して、一般的な加工については機械のシェアリングが広がりそうだ。「米国では工作機械版の米ウーバー・テクノロジーズが登場した」(工作機械大手首脳)。米国全体の工作機械の稼働率は4割ほどにとどまるとされ、空いている工作機械を会員が共有するサービスだ。

 シチズンマシナリー(長野県御代田町)は15年に、10年後の旋盤工場の予想図を示した。工場経営者が自宅で目覚めのコーヒーをすすりながら、ほぼ無人の工場の機械を稼働させる。

 材料費や為替の変動を加味して自動見積もりし、採算が合うようにプログラム上で工程を組み直す。故障予測と予防保全がなされた機械がダウンすると、天井のロボットが故障部位を交換するといった具合だ。

 わずか3年前に想定した世界だが、すでに機械の遠隔監視など一部は製品化された。変化は早い。
(文=六笠友和、名古屋・戸村智幸)

日刊工業新聞2018年2月16日

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六笠友和
編集局第一産業部
編集委員

日本の工作機械業界がモノづくりの現場をリードしつづけるためにも、世界先端の動向に乗り遅れることは許されない。

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