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女性研究者だってチームのリーダーになりたいんだ!

コツコツと研究一筋の意識が変わる
 理工系研究者・技術者のうち、「大学・研究機関で研究室やチームを主宰したい」と思う女性はこの13年間、コンスタントに増え続けている―。男女共同参画学協会連絡会が2016年に実施し、17年にまとめた約1万8000人のアンケートなどで、こうした傾向が明らかになった。これまで女性研究者は昇進が難しいと思われがちで、“コツコツと研究一筋”を選ぶ傾向があった。今後はチームを率いるリーダーの輩出が期待されそうだ。

 男女共同参画学協会連絡会は、医歯薬系を除く自然科学系約100の学協会に横串を刺す連絡会。03年から約4年ごとに学会員を中心に男女の意識調査を実施している。最新の16年調査では、回答者の8割が大学・研究機関、2割が企業の所属だった。

 調査では「希望する職業」の回答項目に、大学・研究機関や企業それぞれでの、「研究に従事」「研究室やチームを主宰」「執行部に参加」などを用意した。

 このうち「大学・研究機関で研究に従事」を選んだのは男女とも約半数と、顕著な男女差は見られない。対して「大学・研究機関で研究室やチームを主宰」を選んだのは、男性が前回(12年調査)比0・8ポイント減の37・7%、女性が同4ポイント増の28・5%だった。

 03年調査以来の傾向を見ても、女性は一貫して増加し続けている。「実力が過小評価されがちだった女性において、意識向上が著しい」(調査をまとめたワーキンググループ)点が注目される。

 女性は男性より若年層が多いことから、実際に研究室を代表し研究チームをリードしていくケースが今後は増えると期待できそうだ。

 同調査は大規模なうえ、仕事の形態や家庭状況など質問が多岐にわたるため、政府施策の議論にも使われる。年数を重ねて今後は、定点観測で生まれてくる新たな知見が活用されそうだ。
                     
日刊工業新聞2018年2月16日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
 女性研究者増という国の方針の中で、課題として「そもそも理工系女性が少なく、リーダーの適任者がいないから…」との声を大学執行部などは口にする。女性研究者自身からも「家庭との両立を優先して、1研究員でありたい」「教授(男性)が厳しく若手研究者の競争が熾烈。私は論文数も少ないし…」「子どもを抱えて、リーダーになるなんてとても無理」という声が以前は、よく聞かれた。しかし少なくとも、大学・研究機関での研究者を職業に考える女性においては、「研究室やチームを率いたい」との意識が、年を追うごとに高まっていることが明らかになった。社会の大きなうねりが、現場の少数派に勇気を与えているのだと感じている。

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