【特別インタビュー】未来学者・川口盛之助氏に聞く(3)自動運転車

作って儲けるからマッチングビジネスへ/ログで行動先読み、究極は「どこでもドア」

 -自動運転車が2020年ぐらいに公道に登場すると言われています。トヨタのライバルは自動車メーカーではなくグーグルという話もありますが、自動運転車はこの先どう進化していくのでしょう。

 「自動運転技術が(コンピューターとこれまで以上に有機的につながった)グーグル的なものから成り立つようになると、コモディティー化の流れは大きく加速する。それが人工知能(AI)というのかはわからないが、自動運転に適した道路とそれと協調動作するクルマのハンドリング技術、というのがある程度確立した時代が来れば、(クルマ本体の価格が下がり)自動車を作るだけではお金が稼ぎにくくなる。メーカーは製造コストが安い地域に出て行かざるを得ない。自動車メーカーも、移動手段という車体ハードの供給元という色彩が濃くなり、最終的にはインドのタタ・モーターズのような新興勢力にやられてしまう世界になる」

 「ビジネスモデルががらりと変わり、結局、クルマを作って収益を上げるという事業形態から、道線誘導のマッチングビジネスに移行していくのではないか。スマートフォンの操作履歴などで人の行動を読み、ちょうどこの辺に行きたい、と思っている人のところに車が格安あるいはタダで出現するようになる。足りない分の運賃を誰が補填するのかというと、そこから客を誘導するレストランや店などが支払う。そして、こうしたビジネスでの収益に各関係者がどれだけ貢献したかを計算し、いわゆる”所場代”を取るのがグーグルのような胴元ビジネスだ」

 「こうしたビジネスのプラットフォームは結局、客のログ(インターネットでのアクセス履歴)をどれだけ知っているかに尽きる。まさにビッグデータそのもの。無料送迎車というのは究極の道線誘導で、ドラえもんに出てくる『どこでもドア』のようなもの。あ、ちょっとあの店の料理を食べたいという考えや行動がログ解析でプラットフォーム側にばれていて、そこに車がうまいように配車され、あちこち曳き回されることになる。自動運転でのゴールとはこういうビジネス形態に進化するだろう」

 -面白いアイデアですね。ただ、自分の考えが読まれているようで怖いですけれど。

 「もともとアマゾンなどのレコメンデーション(オススメ)の世界はそういうもの。これまでの購買履歴をもとに、自分が欲しそうなものを知らせてくれる。それがさらに発展すると、客引きがクルマになって、そのデータを提供するのがスマホをいじっている自分。どこでもドアがあるかないかどころか、『俺のところにはクルマが3台も来るんだよね』というのが、ある意味ステータスになったりするかもしれない」

 -リアルとバーチャルが自動運転車を介してくっつくわけですか?

 「グーグルと自動運転を介したリアルとの接点を求めるとそういうことになる」

 -自動運転車という製品を作って売って利益を上げるような、単純なビジネスモデルではないと?

 「自動運転車の性能が差別化の律速段階であるうちは、自動車メーカーが価格決定権を持っている。だが、開発が進展して、ある程度パソコンのようにどの車種も同じ状況になると、コモディティーになる。人が動く理由そのものをクルマメーカーが考えなければいけなくなる。それはある意味、JTBやJALのようなオペレーターの事業形態に近い。東急電鉄が田園都市開発をしたようなもの。鉄道運輸で収益を上げるというのもあるが、もっと大きな目標があって、沿線開発という、利益をより稼げるところに行かざるを得ない。自動運転車も同じような道をたどる」

 -最近では若い人がクルマをあまり買わなくなり、自動車メーカーは需要喚起に四苦八苦しています。自動運転車の時代になってビジネスモデルが変わり、クルマのニーズも大きく変わるかもしれませんね。

 「クルマが乗り捨てのシェアードカーみたいに全部なったら、ある意味、鉄道やエレベーターと同じ輸送インフラになる。クルマがマイカーである必要はまるでない。そのときに自分はクルマを作りたい、でも、電鉄会社の沿線開発のような、畑違いのことはやりたくないという理系の人もいる。そういう人は、前に話した要求性能が青天井の外骨格ロボットスーツに取り組めばいい」

 「4輪走行とは違う二足歩行で、タイガー・ウッズのショットが楽しめたりする。アシストスーツは身体性の延長そのものなので、エンジニアが目指してきた人車一体を真の意味で実現することが可能だ。超人になれるという意味で、ユーザーとしては強い動機づけがあるし、自分で歩行制御をやっているので、『アシモ』と比べてコンピューターリソースを浪費することもない。それはまさに、自動車エンジニアのやりたいことがズバリ付加価値として認められ、金になる世界だろう」

<プロフィール>
 川口盛之助(かわぐち・もりのすけ) 
 1984年慶大工卒、米イリノイ大理学部修士修了。日立製作所を経てアーサー・D・リトルジャパンでアソシエートディレクター。13年株式会社盛之助(東京都中央区)を設立し社長。日経BP未来研究所アドバイザー。代表的著作の『オタクで女の子な国のモノづくり』で「日経BizTech図書賞」を受賞。同書は英語、韓国語、中国語、タイ語にも翻訳され、台湾と韓国では政府の産業育成の参考書としても活用される。兵庫県出身、54歳。

※次回は7月6日の週に公開予定

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藤元正
モノづくり日本会議実行委員会
委員長

日本でも5月末にDeNAとZMPが自動運転車のロボットタクシー会社を作ると発表。スマートフォンを使って配車サービスを提供し、急成長中の米ウーバーもゆくゆくは自動運転車によるサービスを狙っている。ただ、どちらもタクシーやハイヤー事業だけで儲けようというのではないようだ。自動運転技術の開発に力をいれる米グーグルの狙いも、人の行動とクルマをインターネットでつなぐことでできる、新たなビジネスプラットフォームの覇権にあるのは間違いない。

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