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阪大がマイノリティー研究者を支援、駆動役のURAとは?

職員とも教員とも異なる新たな専門職
阪大がマイノリティー研究者を支援、駆動役のURAとは?

外国人研究者向けセミナーは理解を促す効果が高い(阪大提供)

 大阪大学は、外国人や若手、女性研究者らを、研究マネジメントの専門職「リサーチ・アドミニストレーター」(URA)が支援する仕組みを整備した。研究でハンディの多いこれらの人材のため、論文投稿やホームページ作成などを支援する。特に外国人向けの英語による研究費申請マニュアルと説明会の効果が大きいという。研究力向上につながる研究者の多様性を、URAが広げる点は注目を集めそうだ。

 阪大は2013年度開始の文部科学省の支援事業「研究大学強化促進事業」に採択され、マイノリティーの研究者の支援をURA活動の柱の一つに据えた。

 16年度までに英語論文投稿での対応など105件、研究者情報のデータベース活用やホームページ作成など情報発信で38件を支援した。

 特に外国人研究者は、日本の研究費助成の仕組みや用語の理解が不十分のため、日本人研究者と同等のスタートラインに立っていないと判断。同省の科学研究費助成事業や特別研究員への申請マニュアルを、URAが英語で作成した。さらにセミナーや個別の申請書作成の支援を英語で手がけるなどした。

 興味深いのは“学内特区”的に動いてきた同大の「免疫学フロンティアセンター」がモデルになったことだ。同センターは別の同省支援事業「世界トップレベル研究拠点プログラム」(WPI)の一つで、外国人が3割超という環境にある。

 そこで「WPIでの支援ノウハウを全学に展開した」と八木康史理事・副学長は説明する。

 同大は研究力強化や部局の活性化に向けて、大学本部が人事をリードする教員ポスト確保を進めている。21年度までに若手・女性・外国人採用のポスト100人分を配分する計画だ。今回の手法との連動による効果が期待されそうだ。
(文=山本佳世子)
日刊工業新聞2017年12月14日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
国際化と研究支援は、事務方も担当教員も異なることが多い。それだけにどちらからも支援の手が不十分で、外国人研究者が困惑するケースが出てきてしまう。URAは大学の職員とも教員とも異なる新たな専門職だけに、この研究者の研究環境整備を担うのは最適かもしれない。マイノリティーの研究者支援となると、URAはさらに男女共同参画や雇用施策にも通じている必要が出てくる。専門性を高めることで、研究現場も理事など執行部も支え、ボトムダウンとトップダウンが融合した改革を促していく-。そうなればURAの存在感は、ほかにないものとして大きく高まるのではないか。

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