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大学の研究が海外メディアに取り上げられる新手法

自然科研機構が“海外駐在員”を活用しプレスリリース
 自然科学研究機構は、大学などでの研究マネジメント人材「リサーチ・アドミニストレーター」(URA)が手がける研究の国際化で新手法を開発した。共同研究の企画や設計を行うベテラン教員を選んで海外駐在のURAとし、同URAのリードで共同研究に携わる博士研究員(ポスドク)を外国大学と国際共同公募した。また日本語と英語の研究成果発表のサイトを活用し、国内二十数大学のURAらに活用を呼びかけ、海外やウェブのメディアの取り上げを増やした。

 自然科学研究機構は、束ねる5研究所のうち、国立天文台と核融合科学研究所の名誉教授2人(日本人、セルビア人)を外国に数年間、滞在するURAに選んだ。国際化活動は現役研究者の個人ネットワークに頼ることが多いため、研究実績の高いベテランのURAなら、各機関の理事らと直接、やりとりできるのが強みだ。

 さらに、同分野で米プリンストン大学と同機構を行き来して国際共同研究を進めるポスドクを、URAの設計により両機関共同で選考・採用した。ドイツではマックスプランク協会の3研究所との協定にURAが導いた。

 一方、同機構は米科学振興協会が運営するプレスリリース配信プラットフォーム「ユーレックアラート」において、日本用のジャパンポータルを開設してもらった。傘下の研究所の研究成果のプレスリリースを日本語・英語で国内外のメディアに届けられる。
 
 これを京都大学や大阪大学などでもURAによる研究成果の英文プレスリリース配信に活用している。年間約50件を発信したり、海外から大きな反響を得たりと、各大学で成果が出はじめた。

 同機構は今夏、URAらのコンソーシアムを立ち上げており、加盟33機関とこれらの情報を共有しており、URAの活動をより推進していく。
 
日刊工業新聞2017年12月7日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
大学共同利用機関は国立大学と似た立ち場の法人で、自然科学研究機構はその一つだ。すばる・アルマ両望遠鏡など1大学では保持できない大型究装置を持ち、自らが研究するとともに国公私立大学に利用してもらうことをミッションとする特異な存在だ。 研究マネジメントの新手法を確立し、各大学へ浸透を図ることも役割の一つといえる。プレスリリース配信の仕組み「ユーレックアラート」の日本での活用促進は、その成功事例といえそうだ。

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