オランダの学術出版社が日本の大学の研究支援で存在感を強める理由

エルゼビア、データベース強みに

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 オランダの学術出版社であるエルゼビアが日本の大学の研究力強化支援で存在感を増している。強みのデータベース(DB)を使った引用論文の分析で、機関を超えた研究者のつながりや異分野への広がりを把握できる。大学ランキングや研究費の獲得で、対策を思案する大学執行部の参考情報として有用だ。研究型大学で構成する「学術研究懇談会」(RU11)で、慶応義塾大学など11校中10校が活用するまでになっている。

 エルゼビアの研究分析ツール「サイバル」は、世界最大級の同社の抄録・引用文献DB「スコーパス」を使う。世界5000社以上の出版社が扱う全分野2万1000誌以上の論文雑誌などカバーする。

 同社は支援する顧客大学に対し、特定分野の論文の数や共著、引用関係を全学・部局・研究者の各段階で分析する。これにより、著名大学・研究者とのつながりや他分野との学際融合の状況を効率的に把握できる。同社アジア太平洋地域グローバルストラテジックネットワーク部門のアンデーシュ・カールソン副社長は、「競争相手と比較した強み・弱みも明らかになる」と強調する。

 こうした情報は、各大学の中期計画などの研究力強化策の立案や研究拠点の新設計画などに有用だ。また共同研究実績のない研究機関との連携模索や、新学部設置に向けて他機関で声をかける研究者の検討にも活用できる。

 従来は研究者個人のネットワークに頼っており、情報が不正確な上、片寄りがあった。

 日本では特に教育研究活動の計画・評価を求められる国立大学や、芝浦工業大学など理工系大学に浸透が進んでいるという。

 同社は現在、情報分析会社に変わるべく業務をシフト中だ。ビッグデータ(大量データ)分析など手がける技術系社員を約1000人と、全世界社員の15%程度にまで増やした。今後は日本でも政府助成金や特許の情報とつなげたサービスを手がける方針だ。
    

(文=編集委員・山本佳世子)

日刊工業新聞2017年10月26日

COMMENT

山本佳世子
科学技術部
論説委員兼編集委員

学術論文雑誌(ジャーナル)は、論文の中身や掲載の可否を検討する「編集」部分は学会などが担当し、学会員のベテラン研究者らが行うことが多い。対して、その後の冊子体としての印刷物作成や、ウエブでのアップの「出版」部分は、エルゼビアのような出版社が行う分業が進んでいる。 同社の研究支援の分析やコンサルティングは、この伝統を土台としたものだ。 ビッグデータ解析・活用や経営などのコンサルティングのサービスは、外部の専門機関だからこそ切り込める面があるが、対象機関の内部から反発も強い。それだけに同社のような、大学・研究機関の文化を理解したうえでの研究改革提案は、内部の理解を得ながらスムーズに進むのではないか。

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