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日本人4年連続の受賞ならず ノーベル化学賞、クライオ電子顕微鏡開発の3氏に

たんぱく質を精製、結晶化せず分子構造を決めることが可能に
日本人4年連続の受賞ならず ノーベル化学賞、クライオ電子顕微鏡開発の3氏に

クライオ電子顕微鏡

 スウェーデン王立科学アカデミーは4日、2017年のノーベル化学賞をクライオ電子顕微鏡(写真)を開発したスイス・ローザンヌ大学のジャック・デュボシェ名誉教授(75)と米コロンビア大学のヨアヒム・フランク教授(77)、英MRC分子生物学研究所のリチャード・ヘンダーソンプログラムリーダー(72)の3氏に贈ると発表した。たんぱく質を精製して結晶化せずとも分子構造を決めることが可能になった。

 日本人は自然科学分野3賞の受賞はかなわず、4年連続の受賞にはならなかった。

 授賞式は12月10日にスウェーデン・ストックホルムで開かれる。賞金900万スウェーデンクローナ(約1億2400万円)は3氏で等分する。

 クライオ電顕により、たんぱく質などの生体分子を生き物の体内に存在する形のまま観察できるようになった。電子顕微鏡は試料を真空に保ち電子線をあてる。デュボシェ氏が試料の周囲をアモルファス状の氷で覆う手法を確立。試料から水分の蒸発や形が崩れることを防いだ。

 フランク氏は電顕の2次元画像から立体構造を再構築するソフトウエアを開発。ヘンダーソン氏がたんぱく質の立体構造を原子レベルの解像度で明らかにし、この計測技術の有用性を証明した。

 現在は、より複雑なたんぱく質への適応が進み、構造データベースの整備が進んでいる。生体内での構造を特定できると医薬品となる化合物の構造を精密に設計できる。創薬分野へ大きな貢献となった。

日刊工業新聞2017年10月5日
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
クライオ電子顕微鏡は原子レベルで構造解析ができる手法として注目されており、特に創薬開発や生体機能の解明などに活用が期待されている。装置を手がける日本電子は、実際に受賞した3氏の一人、米コロンビア大学のヨアヒム・フランク教授の研究に1980年代後半から90年代前半にかけて同社製品が使われるなど、研究開発に貢献してきた。同社は「クライオ電子顕微鏡の黎明(れいめい)期から約30年にわたり開発に携わってきた当社としても非常にうれしい」とのコメントを寄せている。

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