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ホンダの電動化シフト。系列サプライヤーは仕事が無くなるどころかチャンス到来

ケーヒン、EV向け部品をホンダ以外にも供給拡大
ホンダの電動化シフト。系列サプライヤーは仕事が無くなるどころかチャンス到来

ケーヒンのPCUはホンダのハイブリッド車などに搭載されている

 自動車用システム製品メーカーのケーヒン。ホンダを中心に多くの完成車メーカーに、電子燃料噴射システム(FIシステム)やエンジン部品などを2輪車、4輪車を問わず供給している。

 同社が現在力を入れているのが、電気自動車(EV)など電動車両向けの製品だ。例えば、パワーコントロールユニット(PCU)はEVやハイブリッド車(HV)に積まれる頭脳のような部品。走行時はバッテリーの電力をモーターに供給し、減速時はモーターで起きた電力をバッテリーに充電する。発生できる電力が大きいことから小型化でき、制震、耐震設計でトランスミッション上に直接置け、完成車メーカーから車両設計の自由度が増すと好評だ。

 バッテリーマネジメントシステム(BMS)は、バッテリー残量の検出や充放電制御をする。検出精度が高いため「バッテリーの電気を上手に使え、航続距離向上につながる」(阿部智也取締役開発本部長)。

 これらの製品は現在、「オデッセイ」や「アコード」のHV設定車などに搭載されている。そもそも、ケーヒンは90年代からHV対応として電動化に資する製品の開発に取り組んできた。それだけに、技術の蓄積は多い。

 「EV用部品は、HV用からエンジン制御などの機能を引き算して作る。電動化に当たる車種は、EV、HV、燃料電池車(FCV)と多いが、技術の軸はHV用にある」と阿部取締役。電動車両向けシステムのトータルサプライヤーを目指す。単品だけでなく、システムとして構築できることを、多くのメーカーに訴求したい考えだ。「コスト、品質、スピード―。完成車メーカーは多くのニーズを持つ。それらに応えるベストパートナーになりたい」(阿部取締役)。

 17年度に始まった新中期経営計画。ケーヒンは19年度までに総額700億円(前回中計は480億円)規模の設備投資と、同670億円(同576億円)規模の研究開発費投入を定めた。取り組むテーマの一つに電動化を掲げ、軸となるPCUやBMSの小型化と低コスト化を図る。全社の売上高は30年に16年度比2倍を目指し、製品の拡販に取り組む。

エフテック、シャシーシステムの開発請け負う


 一方、エフテックは国内の研究開発拠点にある自動車部品の設計部門とテスト部門を数カ月後をめどに統合する。これまでサスペンションやサブフレームなど足回り部品を単体で手がけてきたが、それらを組み合わせたシャシーシステムとして開発したい考えで、開発速度を上げるため統合が必要と判断した。統合により、新部門の人員数は現在の2倍の100人規模になる。開発力を高めつつ完成車メーカーとの関係も強め、メーカーの開発負荷の軽減に寄与したい考え。

 統合するのは「芳賀テクニカルセンター(TC)」(栃木県芳賀町)の中にある設計部門とテスト部門。両部門はともに50人程度を擁する。設計部門は各部品単体の図面作成を担当し、テスト部門は完成車メーカーに納める前に各部品が仕様通りにできているかなどを確認する。

 現在、エフテックはシャシーシステムの開発強化を掲げている。単品ごとでは生み出すのが難しかったシステム全体の剛性の向上が図れ「効率的で合理的な開発が図れる」(古澤好記取締役)。

 ただ、シャシーシステムを開発する場合、従来の単体部品と比べて取り組む項目が増える。設計とテストが分かれたままでは情報共有や開発スピードの点でうまく立ち回れない可能性があるとし、統合を決めた。統合後、数人をスペシャリストとして養成する。

 シャシーシステムはこれまでホンダ側で開発することが多かった。開発活動全体における電動化の優先順位は上がっており、エフテックはシャシーシステムの開発を請け負い、ホンダ側の足回りにおける開発負荷を軽減したい考え。

 ホンダは2030年までに世界販売台数の3分の2を電動車両とし、その内の15%をEVと燃料電池車(FCV)が占めるよう、目標を設定している。ホンダの系列サプライヤーはトヨタ自動車の系列サプライヤーより規模が小さい。さらにドイツ・ボッシュなど世界ではメガサプライヤーが規模と技術力でより力をつきけている。

 ケーヒン、エフテック以外の企業でもホンダの流れをどれだけつかまえることができるか。製品をどれだけ他社に拡販できるか。さらに大きなチャンスをつかむには企業再編なども選択肢として持っておく必要がある。
 
日刊工業新聞2017年9月20日/22日の記事に加筆
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ホンダは八郷体制になって系列回帰のような動きも見せているが、一方でサプライヤーの「自立」も促している。大きくなればいいというものではないが、企業規模を考えると一定の再編は避けられないだろう。

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