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中小・中堅企業の登竜門「発明大賞」応募受付中

応募締め切りは9月30日、表彰式は来年3月中旬
 中堅・中小企業を対象とした表彰制度の中では歴史が古い「発明大賞」。今年で第43回を迎える同表彰は、全国の中堅・中小企業の発明を発掘し、その功績を広く認知すべく実施されている。学識経験者による厳格な審査を経て受賞した企業は、関係諸官庁からの信頼が厚い。かつて受賞した企業は経済産業省主催「ものづくり日本大賞 内閣総理大臣賞」や文部科学大臣表彰「科学技術賞」を受賞するなど、発明大賞をはずみに飛躍した企業も多い。

 応募対象は中堅・中小企業(資本金10億円以下の企業)、及び個人またはグループで、案件は特許・実用新案を登録済み、または公開された発明考案。

 「発明大賞本賞」「発明大賞東京都知事賞」「発明大賞日本発明振興協会会長賞」「発明大賞日刊工業新聞社賞」にそれぞれ1社のほか、「発明功労賞」「考案功労賞」「発明奨励賞」「発明育成賞」として複数社を表彰する。応募締め切りは9月30日(当日消印有効)。表彰式は来年3月中旬に東京都内で予定している。

 応募などの問い合わせは、(公財)日本発明振興協会(03・3464・6991)へ
公式ページ:http://www.nikkan.co.jp/html/hatsumei/

「神さんが試練を与えてくれた」


第41回発明大賞で受賞した「サンパック」


 「神さんが試練を与えてくれた」。サンパック(大阪府吹田市)会長の青山健祐は過去を振り返るとき、この言葉を思い出す。目の前にある困難を「乗り越えていけば新しい景色が見えてくる」というのが青山の考えだ。パッケージやノベルティーグッズなどの商品開発会社を設立して45年。「商いをしたい」意欲がどんな時でも前向きな姿勢を生んだ。

 オリジナル商品では試行錯誤を経て「フットグルーマー」を2013年に発売した。2年半で20万台のヒット商品となり、第41回発明大賞では発明功労賞を受賞した。突起状の樹脂の上で足裏をこすり角質を取る商品だが、開発のきっかけは50年近く前にさかのぼる。ある社員の悩みがきっかけだった。

 常務の西村達夫は高校時代、足裏が汗でヌルヌルになる悩みを抱えていた。そこで風呂で体を洗う際、セメントの床に足を擦りつけた。繰り返すうちに、セメント内部の小石が足に当たり、ぬめりが取れた。足裏の悩みを解消する商品を作りたいと思い、サンパックに入社した後も開発に取り組む。

衛生問題クリア


 75年、西村が25歳のころ、知り合いに頼み30センチメートル四方の木の板に複数の繊維を植えた試作品を作ってもらった。セメントより擦り心地はよいが、せっけんカスや髪の毛が絡み、使い続けるとカビが生えた。商品にならないと思い、開発を挫折した。

 それから約20年後、西村はプラスチックの射出成形を行う市島工場(兵庫県丹波市)で、人工芝の金型を機械に取り付けていた。プラスチック樹脂が機械から出てきたとき、形を見て「これやったらいけるわ」と足を擦る商品のイメージがわいた。人工芝は形が格子状で無数の突起もある。水はけもよく「衛生面で全然問題ない」と確信した。

提案に賛同


 当時、社長の青山に足裏の角質を取る商品の開発を提案した。金型代が1400万円で売れるか分からない商品への投資は「絶対無理だろう」と内心思っていた。だが青山は西村の提案に賛同し、オリジナル商品の製作を喜んでくれた。西村は試作品を作り始めた。

 しかし、肝心の泡が立たなかった。泡は空気と水とせっけんが混ざり合うことで発生する。かき混ぜるブラシの本数が少ないと思いブラシを倍増させた。するとうまく泡が立った。こうして96年、オリジナル商品第1号となる「足あらおっ!」を発売した。しかし、販売当初は商品が全く売れなかった。開発者の西村は真っ青になった。
(敬称略)
2013年に販売したフットグルーマー。累計20万台売れた


日刊工業新聞2016年4月5日

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