ニュースイッチ

連続犯を捕まえるのは「数理」の力!居住地を割り出す高精度の予測法

明治大学の中村和幸准教授らがを開発
 明治大学総合数理学部の中村和幸准教授らは、連続犯罪の犯人の居住地を割り出す高精度の予測法を開発した。確率的手法の「ベイズ推定」に、位置推定で使われる「粒子フィルタ」を導入した。従来の推定法に比べ、犯行地点の数が増えても、絞り込みがより適切にできることを確かめた。

 過去の犯罪データから、次の犯人の行動を推理する「プロファイリング」のうち、連続犯罪の犯人の居住地・本拠地を地図上で見つけ出す「地理的プロファイリング」には複数のモデルがある。ただ、それまでの犯行地点を使って数学的処理をするため、突出した「はずれ値」があると絞り込みが難しかった。

 明治大の中村准教授と同大大学院博士前期課程2年の藤岡徳穂さんは、ベイズ推定に注目し、犯人はある密度関数の「犯行確率分布」に従って犯行地点を選ぶと仮定した。精度を上げるため、動画の被写体を自動追跡する「モーショントラッキング」などで使われる粒子フィルタ技術を導入した。高確率で居住地を発見できる捜索地域を割り出せるという。

 八つの犯行地点をもとにしたシミュレーションを従来法とともに実施した。その結果、8割以上の確率で犯人の居住地をつきとめるのに、今回の手法がもっとも小さい面積となり、優れていることを確かめた。

 英国で開発された地理的プロファイリングは、日本の警察でも研究が進められている。中村准教授らは従来の仮説と検証しながら、妥当性を検討していく考えだ。
日刊工業新聞2017年8月29日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
ビッグデータや人工知能(AI)などに関わる数理・データ科学は、理工系をはじめ、文理問わず大学教育の共通基礎として、これから広く位置づけられる動きとなっている。ビジネスのデータ解析から新たな商機を期待する産業界の声は、もっともだと思う。一方で、「数学が苦手だからこの専門を選んだのに」という学生の戸惑いも出てくるだろう。「連続犯罪の解明で数理が使われるのか」と興味をひくこのような事例を通じて、若い人が「よし、がんばって数理科学と自分の専門分野の融合に乗りだしてみるか」と奮起するのでは…と期待している。

編集部のおすすめ