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政府、自然災害対策でIoT前面に。洪水に特化した水位計

雨量や水位などをビッグデータ収集、AIが警戒状況を推定
政府、自然災害対策でIoT前面に。洪水に特化した水位計

孤立している岩屋地区へ向かう自衛隊員(7月7日午後=福岡県東峰村)

 頻発する豪雨や台風、地震などの自然災害を受けて、政府は防災・減災対策を強化する。河川氾濫対策や台風・豪雨などの予測高度化、災害時の情報伝達強化などを推進。最新の技術や運用手法を取り入れ、ハード・ソフト両面で防災力を上げていく。

 国土交通省は社会全体で河川氾濫などの水害に備える体制を整備する。2018年度予算概算要求では、17年度当初予算比14%増の4774億円を計上した。堤防のかさ上げや堤防決壊までの時間を引き延ばす堤防構造の工夫などに取り組む。

 IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)といった先進技術も活用する。その一つが、洪水に特化した水位計の導入だ。水位情報を検知して収集し、各地の状況を把握できるようにする。

 さらにIoTとAIを組み合わせた防災対策も検討する。雨量や水位などの情報をビッグデータ(大量データ)として収集。AIがビッグデータから警戒状況を推定し、災害対策に役立てる。

 気象や地震の観測体制も充実させる。気象庁は計算能力を強化したスーパーコンピューターシステムを導入する計画だ。台風の中心気圧や最大風速といった情報を、現在より2日多い5日先まで予測。また、大雨による降水量を現在の2倍以上となる15時間先まで予測できるようにする。概算要求に約40億円を盛り込み、18年6月からの運用開始を目指す。

 文部科学省は東京ガスやJR東日本といった企業や国が持つ5000カ所以上の地震計などの観測データを集約するシステム構築に10億円を計上。首都直下地震を想定し、集約したデータを首都圏の企業や自治体に発信するサービスを21年度以降に始める。国と企業の観測網を組み合わせて被害状況をより詳細に把握し、震災からの早期復旧につなげる。

 総務省は被災した市区町村を人的支援する仕組みを構築する。被災していない自治体から職員を派遣し、避難所の運営や罹災証明書の発行などの支援ができるようにする。年内に仕組みのあり方をまとめ、18年度はその訓練などを行う。

 きっかけは16年4月に起きた熊本地震。九州エリアではもともと災害時に被災市区町村を1対1で支援する自治体を決めて対応していた。これにより、災害時に迅速に応援職員を派遣できた。

 総務省が構築するのはこの支援方式の全国版。併せて支援員の登録・派遣制度も設置する。18年度概算要求で新規事業として3000万円を盛り込んだ。
(文=村山茂樹、福沢尚季、清水耕一郎)
日刊工業新聞2017年9月1日
八子知礼
八子知礼 Yako Tomonori INDUSTRIAL-X 代表
 水位センサーと検知の仕組みなどはこれまでにも主要な一級河川に取り付けられていることを見たことがあるが、さらに支流などからの流入や氾濫が頻発する河川には水位測定ニーズが強い。すでにABITが八王子で超音波とLoRaWANを使った水位センサーと検知の仕組みの実証実験を行っている。まだ崩壊の恐れがある山際の土砂の水分量や歪みなどをセンサーでモニタリングしておき危険度が高まれば避難警告を出す仕組みもすでに構築を検討し始めているところがある。あとはこれらから上がってくるデータをつないで予測モデルを作っていくことになる。政府の後押しにより自治体の積極的な取り組みが進むことで甚大な被害が未然防止されることを期待したい。

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