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“クローン文化財”のみの展示会 東京芸大が3Dプリンターなどで再現

門外不出の文化財を世界に持ち運ぶことが可能に
“クローン文化財”のみの展示会 東京芸大が3Dプリンターなどで再現

宮廻教授と法隆寺釈迦三尊像のクローン文化財

 東京芸術大学は、オリジナル同等の素材、質感、技法を再現した“クローン文化財”のみの展示会を今秋開催する。シルクロード美術の仏像や壁画などの画像データを基に、3次元計測や科学分析、3Dプリンターなどを使って忠実に再現する同大が特許を持つ技術を駆使した。さらに欠損や薄れた部分を補うなど、オリジナルより進化した姿を鑑賞してもらう。 

 9月23日から同大大学美術館(東京都台東区)で開く企画展は、シルクロード美術がテーマ。同大の130周年記念プログラムの一環となる。

 模写作業中に焼損して永遠に失われた日本の「法隆寺金堂壁画」の原寸大12面のほか、保存のため一般公開が難しい中国の「敦煌莫高窟第57窟(くつ)」、2001年に破壊されたアフガニスタン・バーミヤン東大仏の天井壁画「天翔(あまかけ)る太陽神」など、実物の鑑賞が困難な文化財をクローン展示する。

 例えば、法隆寺釈迦三尊(しゃかさんぞん)像では、欠落した「螺髪(らほつ)」や背部の「大光背周縁」に存在を想定されている「飛天」(天人・天女)を復元する。

 同大大学院の宮廻正明教授は、「この技術により、門外不出だった文化財を世界に持ち運ぶことが可能となる」と文化共有の新たな未来に期待を示す。

 また、企画展では現代のデジタル技術を使用し、千住明特任教授が作成した音楽や、各国のにおいなど、五感を使ってシルクロードを体感できる展示も予定している。
日刊工業新聞2017年8月10日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
中東では紛争によって重要な文化財が多数失われました。クローンを残しておくことで、今後破損した場合の修復にも役立ちそうです。

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