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昭和電工はコスト競争ではなく高付加価値で勝負できるか

新井龍晴常務執行役員に聞く。「20年まで受給バランスの大きな変化はない」
昭和電工はコスト競争ではなく高付加価値で勝負できるか

大分コンビナートのエチレンプラント

 ―今後の石化市況の見通しは。
 「2018年から米シェール由来のエタンクラッカーからエチレンが生産され、ポリエチレンなどがアジア地域へ流れる。ただ、需要の伸びに加えて、実際の生産能力は公称より低いはずで、稼働率もある。来年は需給バランスが少し崩れるかもしれないが、20年までは現状のバランスから大きく変わることはない。ただ、最近は海外(中国や韓国、インドなど)でのクラッカー新・増設の話が上っており、全て実現するかは不透明だが、引き続き注視していく」

 ―17年12月期の重点方針は何ですか。
 「(大分コンビナートの定期修理がある)来春までの安定操業が目先の課題だ。また、オレフィンは現状のようなフル稼働を続けたい。生産量全体の20―25%を輸出に回しており、仕向け先は中国や韓国、台湾が多い。顧客ポートフォリオの組み直しに力を入れている。優良な顧客をつかんで、確実に消費してもらわないといけない。地道な省エネルギー・コストダウンでコンビナートの競争力を強化して、フル稼働のベースを守る」

 ―外部環境への耐性を強めるには自家消費拡大も大事です。
 「当社は今まで誘導品にあまり力を入れてこなかった。20年までに一つか二つのプラントを立ち上げて、工場内のオレフィン自消を増やしたい。大分で触媒開発で蓄積した技術をベースに研究開発を進めているところだ」

 ―JXTGエネルギーや蘭ライオンデルバセルグループと共同出資していたポリプロピレン製造のサンアロマーを16年に連結子会社化しました。
 「将来の事業戦略の違いだ。ライオンデルバセルは汎用品を大量生産して効率を上げて販売する考えだったが、我々は付加価値の高い製品を狙って研究開発を進めるスタンスだ。考え方が違うので、分かれる決断に至った。新規グレードを年間二、三つ開発する目標を掲げている。大分という立地を生かして、特に自動車分野に力を入れる。車関係で量を稼ぎ、包装材など特殊用途で利益率を上げる戦略だ」
新井龍晴氏

【記者の目】
 九州唯一の石化コンビナートという特徴を生かして、アジアへのオレフィン輸出も行ってきた。自家消費が主な同業他社とは一線を画す。海外市況高の追い風も継続し、17年12月期の石化事業は営業利益が従来予想より上振れしそう。ただ、18年以降の市況変動リスクを考えれば、自消拡大は安定操業へ最善の道だ。研究開発の成果に期待したい。
(鈴木岳志)
日刊工業新聞2017年7月26日
米山昌宏
米山昌宏 Yoneyama Masahiro
 シェールガス・タイトオイル由来の新規エチレンクラッカーは今年から立ち上がってきます。また、アジア・中東でも能力が増強されており、2020年前半までは、需給がゆるむ可能性があります。現在の原油価格では、ナフサクラッカーは競争力があります。  しかし、ナフサクラッカーは、原油価格が競争力に影響を与えますので、コストで競争するのではなく、高付加価値の製品を開発する必要が有ります。米国の2022年以降のシェールガス・タイトオイルからのエチレンクラッカーの計画は、原油価格に左右されます。

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