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プロジェクターの用途広げたい!エプソン、レーザー光源の進化に焦点

小川執行役員に聞く「2―3年内に輝度3000ルーメンの中級機種」
プロジェクターの用途広げたい!エプソン、レーザー光源の進化に焦点

豊科事業所のロビーで空間演出を実演。柱や湾曲した壁面にも画像を投写する

 企業内の会議や大学内の講義などに使われるプロジェクターの役割が、変わろうとしている。従来の用途に加え、近年、プロジェクションマッピングによる空間演出が注目されている。東京都内や都市部では、プロジェクションマッピングを使ったイベントは最近珍しくない。プロジェクター最大手セイコーエプソンの小川恭範執行役員ビジュアルプロダクツ事業部長に、今後の展望を聞いた。

 ―プロジェクターの市場動向は。
 「主力の企業・教育向けの需要が縮小する一方、空間演出に利用される高光束製品や輝度500ルーメン以下の家庭用小型製品の需要が伸びている。高光束製品は、当社も輝度2万5000ルーメンの製品を投入するなど、ラインアップを拡充している。着実に投資し、販売を拡大したい」

 ―新用途の開拓は。
 「看板や照明、店舗内の空間演出などへ利用を拡大したい。中核拠点の豊科事業所(長野県安曇野市)のロビーでも、空間演出を始めた。空間演出の専門業者と組み用途を広げていくが、新しい用途を広げるにはまだまだ技術開発が必要だ」

 ―具体的には。
「例えば、明るい店舗内の演出には光源の明るい高光束製品が向く。レーザー光源を進化させたい。また、現在は個々の案件ごとに投写条件を調整して、車などの立体に投写している。これをセンサーで自動的に立体を認識して、条件調整を自動化できないだろうか。ロボット分野との連携も考えたい。照明向けでは、2017年度内に照明用ダクトに取り付けられる第1弾モデルを出したい」

 ―中国で小型の家庭用プロジェクターが人気と聞きます。
 「当社もチャレンジしたい分野だ。家庭のリビングで使うには、画像を明るくする必要がある。パソコン画面の半分以下の大きさで、レーザー光源を搭載したい。テレビ番組ではなく、インターネット動画を視聴する人も増えている。プロジェクターだけでネット動画を見られる仕掛けも必要だろう」

 ―用途拡大には、レーザー光源の進化がカギになりそうです。
 「現在、光源からスクリーンに投写されるまでに、半分以上のエネルギーが損失している。光源は部品メーカーから購入しているが、光を取り出す技術は当社が担う。光源ユニットと光学エンジンの両方で効率を改善し、コストを低減して、レーザー光源の搭載機種を拡大する。2―3年内に輝度3000ルーメンの中級機種にも搭載したい」
(聞き手=梶原洵子)
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
セイコーエプソンのプロジェクターの市場シェアは35%で、世界トップを走る。ただ、新たに開拓する輝度2万ルーメン以上の高光束製品や照明用途では、パナソニックが先行しており、エプソンは追いかける立場だ。しかも、販路は従来の企業・教育用途と全く異なる。巻き返しのポイントは、レーザー光源の進化により、高光束タイプのコスト低減と小型化でいかにリードするかだ。省エネ、小型化、精度追求の同社の「省・小・精」の技術力が問われる。 (日刊工業新聞第一産業部・梶原洵子)

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