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【連載】アジアに臨む・沖縄特区のモノづくり#04 最先端のモデル工場を沖縄に

製造業“不毛の地”のいま。ダイヤモンドワイヤ増産、主役は沖縄
【連載】アジアに臨む・沖縄特区のモノづくり#04 最先端のモデル工場を沖縄に

シェア拡大に向け、沖縄工場の増強も検討していく

 製造業が根付きにくく、かつては「不毛の地」とも言われた沖縄。だが、そこに根を張り、アジアに向けて枝葉を伸ばし“果実”を得られるようになった。その沖縄から内外を見据え、奮闘するモノづくり企業を紹介する。

 「最先端の設備を持つモデル工場だ」。中村超硬の井上誠社長は沖縄工場をこう評価する。2016年12月、ダイヤモンドワイヤの生産拠点を沖縄県うるま市の経済特区・国際物流拠点産業集積地域で稼働した。同社の大阪府内の2工場と比べても「レベルは高い。競い合い、部分的には勝っている」と井上社長は太鼓判を押す。

 ダイヤモンドワイヤは半導体メーカーがシリコンをウエハーに加工する工程で使う。主力は太陽電池用。中村超硬は多結晶向け製品への参入で顧客を広げ、シェアを大きく伸ばしている。

 沖縄工場は早くもフル稼働。全社の同ワイヤ生産能力は沖縄の稼働で4割向上した。加えて「最新設備がある沖縄でしかできない」という生産性向上による大幅増産にも取り組む。沖縄の位置付けは単なる新造設備以上に高い。

 立地から半年が過ぎ、課題も感じている。仕向け地の中国への海路の直行便がなく、リードタイムが長い。産業廃棄物は最終処分を県外に頼らざるを得ない。だが改善すれば「怖いものなし」と言い切る。

 同ワイヤは大量生産ではあるが、工程で「感性に依存する部分」があり、単純な装置産業ではないという。そのため地元採用率9割の従業員には、高い精度と改善意識が求められる。分社化しないのは「制度(活用)よりもマインドを優先」し、一体感を生むためだ。効果は出ている。

 さらなる能力増強について井上社長は「増設の余地があるのは沖縄工場だけ。判断中だということは否定しない」と明かす。「2、3年でグローバルトップを取る」とも。その成長に沖縄が果たす役割は非常に大きい。

■企業概要■
◇企業名=中村超硬◇本社=堺市西区◇代表者=井上誠社長◇製造品=ダイヤモンドワイヤ
(おわり)
#1半導体検査装置を直接輸出「沖縄先端加工センター」
#2アジアのセントラルキッチン「アンリッシュ食品工業」
#3震災後4ヶ月で立地、輸出拠点に「沖縄東京計装」
日刊工業新聞2017年6月28日
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
沖縄の国際航空貨物は、ANAグループが那覇空港を拠点化したことで利便性が高まりました。一方で海運の方は解決すべき課題がまだ多いです。沖縄への移入(輸入)の方が移出(輸出)を大きく上回る「片荷」のため、輸送コストが高いという問題があります。そのためにも沖縄からの出荷を増やす必要があります。ネットワークの面では台湾を海運のハブとして接続を強化しています。

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