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株価がさえないLINE、AIスピーカーは「スマートポータル構想」の切り札になるか

クローバをオープンプラットフォームに育てられるかがカギに
株価がさえないLINE、AIスピーカーは「スマートポータル構想」の切り札になるか

AIスピーカー「ウェーブ」(左の卓上)を披露する舛田LINE取締役

 LINEは独自の人工知能(AI)を搭載したスピーカーを2017年秋に発売する。話しかけると会話したり、ニュースを読み上げたりする機能を持つ。多様なサービスなどとの連携も推進し、AIの価値を高める考えだ。音声を使った端末とのコミュニケーションが浸透し始める中、米アマゾン・ドット・コムなど米国勢の来襲を前に先手を打ち、音声対話の覇権を狙う。

 「本日の東京都渋谷区の天気は晴れ、一時くもりです」。都内で開かれたLINEの事業戦略発表会。AI搭載スピーカー「WAVE(ウェーブ)」は「今日の天気は?」という問い掛けに対し、そう返答した。ウェーブを初披露したLINEの舛田淳取締役は「音声で話しかけるだけでいろいろなことができます」と、デモンストレーションの成功に安堵(あんど)の笑みを浮かべた。

 ウェーブは、親会社の韓国NAVERと共同で開発したAI「Clova(クローバ)」を搭載した初の端末だ。話しかけるとAIが内容を認識し、音声で会話したりニュースや天気を読み上げたりする。正式発売は今秋だが、機能を絞った先行版を今夏に発売する。

 AI搭載スピーカーをめぐっては、米国勢による日本市場への参入が間近に迫っている。米グーグルは「グーグル・ホーム」を年内に発売する予定。アマゾン・ドット・コムの「アマゾン・エコー」も年内の発売が噂(うわさ)されている。

 LINEはこうした動きに先行する構えだ。舛田取締役は「多様な企業がAIに挑戦する中で、少しでも早く利用してもらいデータを蓄積することは競争力になる」と力を込める。

 一方でウェーブはクローバの能力を示すショーケースにすぎない。LINEの出澤剛社長は「(ウェーブは)クローバをオープンプラットフォームにする第1段階」と説明する。多様なメーカーなどとクローバの連携を推進する呼び水と位置付ける。

 LINEは対話アプリケーション(応用ソフト)「LINE」を“入り口”に多様なサービスを展開し、利益を拡大する「スマートポータル構想」を成長戦略に掲げる。今後、音声によるコミュニケーションが浸透すれば、それをつかさどるAIが搭載された端末は対話アプリに変わる“入り口”になる。このため多様なメーカーと連携し、クローバを搭載した端末を増やすことで「スマートポータル」の利用者拡大につなげる狙いだ。

 また、オープンプラットフォームとしての価値を高める上ではクローバとつながるサービスの拡大も肝要だ。このためLINEは洋服や家電などのブランドの電子商取引(EC)サイトに送客するサービスを始めた。またコネクテッドカー(つながる車)分野における新サービスの検討に向けてトヨタ自動車と合意するなど、企業との連携も着実に進めている。
              

日刊工業新聞2017年6月28日



LINE買い物、流通総額1000億円へ


 LINEは対話アプリケーション(応用ソフト)「LINE」を通じて洋服や雑貨、家電などの買い物を楽しめるサービスを始めた。

 利用者がサービス内で紹介されている商品を選ぶと、取り扱っている企業などの電子商取引(EC)サイトに送客される。2018年度に流通総額1000億円を目指す。同社は「LINE」を入り口に多様なサービスを提供する戦略を推進しており、新サービスでその戦略を加速させる。

 新サービスは「LINEショッピング」。サービス自体は決済機能などを持たず、利用者を各企業・ブランドのECサイトに送客する。

 DHCやナイキ、GAPなど100以上の企業やブランドの商品を紹介する。サービスを経由して買い物をした場合、購入金額の最大20%をLINEポイントとして付与する。LINEポイントは電子マネー「LINE Pay」などと交換できる。

 今後は実店舗との連携も視野に入れる。またフード宅配サービス「LINEデリマ」の提供を今夏に始める。

日刊工業新聞2017年6月29日

日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
日米同時上場から間もなく1年。16年12月期の決算発表時は株価が上場以来の最安値を記録するなど、期待値ほどの伸びは見せていない。AIへの挑戦が成長に向けた起爆剤になるか注目される。 (日刊工業新聞・葭本隆太)

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