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三セク、約10年で16%減も処理先送り案件も

補助金投入、自治体の財政リスク続く
三セク、約10年で16%減も処理先送り案件も

佐川急便と北越急行、貨客混載列車を運行

 東京商工リサーチは2015年度の「第三セクター等」が全国で7532法人と、06年度比16・4%減だったとする調査結果をまとめた。政府が自治体に対し、09―13年度に第三セクター等の抜本的改革を要請したためとみられる。ただ、補助金の総額が5632億円に達しており、自立できないまま処理も先送りされた第三セクター等を抱えた自治体は大きな財政リスクを残している。

 第三セクター等を法人区分でみると、第三セクターが同14・9%減の6615法人、地方三公社が同34・0%減の795法人となったが、地方独立行政法人が同4・5倍の122法人だった。公共性の高い事業を効率化するため自治体から分離・独立した地方独立行政法人は、病院や公立大学法人などが多く含まれる。

 15年度の第三セクター等の総売上高を示す収益総額は前年度比3・3%増の5兆9753億円と、2年連続プラス。経常利益額も同44・7%増と大幅に改善した。経常赤字法人率も35・5%と6年ぶりに35%台に低下し、経営改善は、着実に進んでいるようにみえる。

 だが、東京商工リサーチは、自治体から5632億円の補助金が投入され、その94・0%が第三セクター等の経常利益に計上されていると指摘。

 また、自治体からの借入金や、金融機関への損失補償・債務保証、出資金など自治体が負担する総額は12兆6204億円に達している。

 東京商工リサーチは、全国的に人口減少が深刻な課題になる中、第三セクター等にも民間企業と同様に「事業性評価」が必要だろうと分析。事業として成り立つか、自治体と住民生活に欠かせない存在か、検証が必要な時期を迎えているとした。
               

日刊工業新聞2017年6月6日



優等生「北越急行」は


 佐川急便は新潟県の第三セクター北越急行と連携し、貨客混載列車(写真)の運行を開始した。ほくほく線六日町駅(新潟県南魚沼市)―うらがわら駅(同上越市)間46・8キロメートルで、平日夜間に1往復運行する。各3分間の停車時間で専用カーゴの積み降ろしを実施し、駅から近くの営業所まではトラックで輸送する。

 地方三セク鉄道における旅客輸送の余力を使い、鉄道などを利用するモーダルシフトで輸送効率化を実現。同路線は並行して高速道路が通っていない山間部。定時運行、安定輸送といった強みが生かせることに加え、トラック輸送距離も短縮できる。両社は2016年6月、事業に合意。本格稼働に向け実証実験を重ねてきた。

日刊工業新聞2017年4月24日


明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ほくほく線を運営する北越急行は三セクの中でもイベントなどが人気で比較的健全だったが、北陸新幹線の開業による在来線特急「はくたか」の廃止により、2015年3月期には初めて赤字決算になった。ただ地方の鉄道は物流危機による新たな活用事例が出てくるかもしれない。より公共性の高い鉄道の存続の判断は難しいが、既得権益の温床として残っているものもまだまだ多い。

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