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もう何が何だか…「東芝メモリ」売却はどうなっちゃうの?

タイムリミット目前でさらに混沌
もう何が何だか…「東芝メモリ」売却はどうなっちゃうの?

東芝の綱川智社長

 東芝の半導体メモリー子会社「東芝メモリ」の売却手続きをめぐり、協業相手である米ウエスタンデジタル(WD)との関係が、膠着(こうちゃく)状態を抜け出せない。売却に反対し過半出資を主張していたWDが、少額出資で譲歩したとの見方が強まっていた。しかし関係者の間では、WDは主導権を握る姿勢を変えていないとの認識も多い。最大の課題を抱え混迷した状況が続くが、東芝が設定する6月末の売却先決定という期限は刻一刻と迫っている。

 「(WDが譲歩したという)あの話は違うと聞いた」―。関係者は漏らす。WDは東芝メモリの経営の主導権を狙いつつ、四日市工場(三重県四日市市)への投資や東芝とのこれまでの協業関係をアピールするなど“アメとムチ”で迫る。

 一時は米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツと政府系ファンドの産業革新機構、日本政策投資銀行が組む「日米連合」がWDと連携する線が最も有力とされていた。しかし東芝とWDとの対立は解消せず「大詰めを迎えているが、何も決まっていない」(関係者)。

 経済産業省のスタンスは変わらない。「技術流出を避けると同時に、四日市工場での生産と雇用が守られる」のが大前提だ。かつ、あくまでも民間を軸に進めてもらいたい、というのが本音。その一方で、革新機構がWD以外の入札者と連携を模索する動きも続いている。

 現在最も有力視される入札者は、米半導体メーカーのブロードコム。しかしたとえ売却先が決まったとしても、新たなスポンサーがWDと協業していけるか、という課題が残る。このままで行けば、四日市工場を運営する合弁会社の契約解消という最悪のケースも視野に入れざるを得ない。

 2018年3月期で2期連続の債務超過回避が最重要課題の東芝。東芝メモリの売却が頓挫すれば、活路が見いだせない。WD以外の候補者に優先交渉権を与え、無理やりにでも手続きを前に進めるしかない状況だ。
(文=政年佐貴恵)
日刊工業新聞2017年6月9日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ロイターによると、産業革新機構やWDなどを軸とした日米連合に、当初参加予定だったKKRに代ってベイン・キャピタルが参加するという。日刊工業新聞も含め連日のようにニュースを流しているが、メディアの役割として決着後、しっかりとした検証記事を書いてもらいたい。

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