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次世代HUDの開発でしのぎ。日本はドイツ大手とガチンコ勝負

マツダ、現行車種にコンチネンタルを採用
次世代HUDの開発でしのぎ。日本はドイツ大手とガチンコ勝負

マツダに採用されたヘッドアップディスプレー(イメージ)

 独コンチネンタルのヘッドアップディスプレー(HUD)がマツダに採用された。同社製HUDが日本の完成車メーカーに採用されたのは初めて。マツダの小型車「デミオ」やスポーツ多目的車(SUV)「CX―3」、「CX―5」向けのオプション品として生産を始めた。

同HUDはフロントガラスに情報を投影する一般的なHUDと異なり「コンバイナー」と呼ぶ小型、半透明のプラスチックのディスクを使う。情報を映すためのフロントガラスとの光路調整が不要で、従来のHUDに必要な面積の半分に抑えられる。運転席周りのデザインの自由度が向上する利点がある。

日刊工業新聞2017年5月19日



コニカミノルタはAR開発


 コニカミノルタは車のフロントガラスを通して、情報を表示する奥行きを変えられる3次元(3D)拡張現実(AR)ヘッドアップディスプレー(HUD)を開発した。例えば、車道へ飛び出してきた人に警告情報を重ねて表示し、運転者との距離と位置を瞬時に把握できる(イメージ)。とっさの判断を助け、より安全な運転を支援する。中・高級車での利用を想定し、2018―19年の市場投入を目指す。

 周囲のセンシング情報を基に、運転者から10―200メートル範囲にある対象に情報を重ねて表示できる。近くの車と遠くの歩行者といった異なる場所に同時に投写でき、動いている対象も追従する。

 従来の平面的なAR HUDでは、歩行者などの対象や運転者の姿勢が動くと、AR画像と対象の重ね合わせがずれ、視認に時間がかかる。緊急停止かハンドル操作か、最適な運転操作を瞬時に判断するには、この表示ずれが課題になる。

 コニカミノルタは独自の光学技術を使い、3DでARを表示できるハードウエアを開発した。顧客の要望に応じて他社製のセンシング技術と組み合わせて提供できる。
コニカミノルタのヘッドアップディスプレー

日刊工業新聞2017年1月16日



パナソニック、ジェスチャーで操作


 パナソニックは、非接触でオーディオなどを操作できる車載向け入力システムを開発した。ハンドルを握った手の指を立てるジェスチャーだけでオーディオや空調を操作する。指先には超音波によって触覚を提示するため、システムが指を認識したかどうかが分かる。スイッチやディスプレーを見たりボタンを押したりする必要がなく、わき見運転を防げる。現在はコンセプト試作機が完成した段階。完成車メーカーへの提案を始める。

 開発したシステムは、まず指の形を赤外線の深度カメラで認識すると、ヘッドアップディスプレー(HUD)に空調などのメニューを表示する。指を立てるとメニュー選択の起動、指を曲げると空調や音楽などのメニューの切り替え、指を左右に倒すと温度の上げ下げや曲送り、音量調整などができる。

 指の認識や操作の入力が完了したことを伝えるために、指先へ超音波で軽い刺激を与える。そこで17センチ×12センチメートルの超音波アレイを独自開発した。指先に超音波が当たりチリチリと感じる。

 ハンドルの後ろに設置すると、左手と右手のどちらで操作しても触覚を提示できる。ハンドルを離したり、スイッチやディスプレーを見たりする必要がない。今後、超音波アレイの小型化高出力化を進めつつ、完成車メーカーに提案していく。
ジェスチャー操作のイメージ

日刊工業新聞2016年12月13日



デンソー「互角の戦いをしている」


 「(主力の)パワトレ(パワートレーン)や熱の部品需要が増えなくなることを想定せざるを得ない」。デンソーの先行技術開発担当の加藤良文常務役員は10年後、20年後を想像し、強い危機感を抱く。完全自動運転によるシェアリングが実現し世界的に広がれば、新車販売が伸びなくなる可能性があるからだ。自動運転分野の行方が部品各社の成長をも左右する時代を見据え、デンソーは技術開発を急ピッチで進める。

 デンソーは9日、富士通テンの出資比率を引き上げ子会社化を検討すると発表した。富士通テンは自動車向けICT(情報通信技術)製品を手がける。連携を深める狙いは自動運転分野の強化にある。自前主義が根強くあったデンソーが他社との連携も駆使し自動運転技術開発を急ぐ。

 デンソーの先進運転支援システム(ADAS)・自動運転分野の研究の歴史は古い。ミリ波レーダーは1990年代に当時「世の中になかった」(松ヶ谷和沖ADAS推進部長)ICから内製し技術を蓄積した。レーザーレーダー(LIDAR)も最初に商品化したのは96年だ。

 センサーだけではない。車車間・路車間通信に不可欠な無線通信機も90年代後半に試作機や実証実験機を開発。「無線機の信頼性については任せてくださいと言える自負がある」(松ヶ谷部長)。デンソーが手がけるこの分野の製品は大きくくくると、こうしたセンサーや通信機器、そしてヒューマンマシンインターフェース(HMI)を加えた三つ。

 HMIは自動運転で「極めて大事になる」(加藤常務役員)として力を入れている分野だ。一つはドライバーステータスモニター。自動運転から人の運転に切り替える際、覚醒させるためなどに求められる機能という。もう一つがヘッドアップディスプレー(HUD)。実際の風景に重ね合わせて走行すべき道などの情報を表示する技術を開発している。

 ドライバーが安心して自動運転を利用するためクルマが今、なぜ、その動きをしているのかを伝える術としてHUDが重要ととらえる。ADAS・自動運転技術で「独コンチネンタル、独ボッシュと互角の戦いをしている」(松ヶ谷部長)と自負するデンソー。10年後、20年後に向けた戦いは、すでに激しさを増している。
(文=名古屋・伊藤研二)
デンソーが開発中のHUD(イメージ)

日刊工業新聞2016年9月15日


※内容、肩書きは当時のもの
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
HUDは自動運転におけるドライバーのインターフェースなので極めて重要なテクノロジー。伝統的なメガサプライヤーとARやAIなどに強みを持つ企業との連携(あるいはM&A)が今後活溌になるはず。完成車メーカーはどこからサプライヤーと組んでいくかも、競争力の分岐点になる。

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