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有機ELの光が救うナースの夜間巡視

タカハタ電子の有機ELナースライト、患者の眠り妨げず顔色判別
 夜間巡視は、看護師にとって気苦労の多い業務である。暗い病室で患者の様子をうかがうには明かりが必要だが、従来の懐中電灯などではまぶしさもあり、直接光を当てにくい。現場改善に向けてタカハタ電子(山形県米沢市、安房毅社長)は、有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)を用いたナースライトの普及に力を入れている。安房善彰開発部企画室長に開発の経緯などを聞いた。

 ―有機ELナースライトの開発はどのような経緯で。
 「昼間に比べて事故の危険性が高まるのがやはり夜間勤務の作業。夜勤時のいわゆる『ヒヤリ・ハット』を少しでも防ぐツールになれば、との思いから開発に取り組んだ。昨年5月に発売した現行タイプは、2013年に市場投入した製品を大幅に改良。重量は従来より40%減の約67グラムと小型軽量化した。改良に向けては20以上の病院など現場の意見を反映させた」

 ―有機ELを使うメリットとは。
 「ストレスを感じにくいと言われる有機ELの明かりは、患者さんの眠りを妨げずに正しく顔色が見える。パネルはこの商品用に開発された国産の有機ELパネルを採用。巡回向けの電球色と確認向けの白色に切り替えられ、いずれも高い演色性を可能にしている。赤や肌色にも正確な発色を示す。顔色などの小さな異変を見逃さないことで、看護師の心理的負担の軽減も期待されている」

 ―普及に向けた取り組みはいかがでしょうか。
 「2月には大阪で開かれた医療総合展(メディカルジャパン)の『第3回介護&看護EXPO』に出展した。実際に体感してもらうために、病室空間を再現した、暗室でのデモで手応えを得た。昨年9月、ドイツでの展示会で用いた手法を国内でも使った。現在はOEM(相手先ブランド)生産をはじめ、医療機器商社を通じた販売を展開している。現在の普及状況は約500台とみている」

 ―今後の展開は。
 「新型は服に装着でき、両手が使えるようになった。また光る秒針機能で点滴落下速度の確認も可能にした。今後も現場の声を聞いて、改良すべき点は改良する。製品の普及が進む段階で、パネルの調達コスト削減も図りたい。海外については北欧などのニーズを探っていく」
巡回向けの電球色と確認向けの白色に切り替えられる(有機ELナースライト)

(聞き手=山形支局・大矢修一)
日刊工業新聞2017年5月2日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
山形県米沢市に立地する山形大学工学部には、有機ELなど有機エレクトロニクスの研究拠点がある。タカハタ電子は山形大学との連携で有機EL照明の製作技術を蓄積しており、今回のナースライトは医療分野向けのツールとして市場投入した。有機EL照明の最新動向については、次世代化学材料評価技術研究組合(CEREBA)が照明環境の生理的・心理的効果の評価技術の研究成果を報告している。自然光に近い有機ELの“やさしさ”が注目される。 (日刊工業新聞山形支局・大矢修一)

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