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「やりたいことを仕事にするなら、派遣社員をやりなさい!」

著者インタビュー エヌエフエー社長・大崎玄長氏
「やりたいことを仕事にするなら、派遣社員をやりなさい!」

大崎玄長氏・エヌエフエー社長

 ―派遣社員というと“派遣切り”などネガティブなイメージを持ちがちですが、真逆をいくタイトルです。
 「まさにそのイメージを払拭(ふっしょく)したくてこの本を書いた。当社でも周りの目を気にして派遣社員を辞めていった人がいる。しかし派遣社員とは世間が思っているような働き方ではない。まず、地位が不安定だと思われているが、実際には派遣会社に就職する。社会保障はしっかりしている」

 「また、いわゆる派遣切りが起きても、派遣会社は次の派遣先を紹介できるため、就業意欲さえあれば失業しない。マスコミが報じない派遣社員の正しい現状を知ってほしい」

 ―具体的に派遣社員として働くメリットを教えてください。
 「まずさまざまな業種の現場で働けるため、“お試し就業”ができる。現在の日本ではいきなり正社員になるのが主流だが、働いてみると仕事が自分に合っておらず不満を持ちながら働く人も多い。最悪の場合は辞めてしまう。最初に派遣社員で経験を積めば自分にぴったりの仕事を探せる上、スキルアップにもつながる」

 「また定時で上がれ、他のことに時間を使える。本にも起業準備期間に派遣社員として働いた方の実例を書いた。さらに、残業したらその分残業代を時給としてもらえる。サービス残業というブラック企業のような働き方がない」

 ―多くの成功例を書いていますが、失敗例はないのですか。
 「この本は決して成功例を書いたわけではない。派遣社員という働き方を選んだ人の“普通の事例”を書いただけだ。そもそも実際に働く会社と派遣社員の間には人材派遣会社が入っている。派遣社員と受け入れる会社とでトラブルになった場合、派遣会社がクッションの役割を果たす。合わなければ社員には別の仕事を紹介する。本来“失敗”という概念はない」

 ―これから派遣社員として働く人の励みになる本ですね。
 「当社に登録している派遣社員には“食わず嫌いせずに、やってみよう”とアドバイスしている。どんな仕事でもやってみないと分からないし、いきなり難しい仕事を任せられることはない。また、2015年の労働者派遣法改正で派遣社員のキャリアアップを支援する取り組みも始まっている。社員登用も含め自分の可能性を試せる場だということを、知ってほしい」

 ―次回作の展望はありますか。
 「次は派遣会社を使う側である、派遣先向けの本を書きたい。派遣会社を使うというのは会社にとっても求人広告費や面接などの採用活動における費用と時間を節約するというメリットがある。また実際に働くところを見て正社員として雇うかを判断できるため、採用の失敗も少ない。派遣社員をどのような現場でどのように雇用すれば効率的なのか、紹介するような本にできればと思っている」

 ―派遣社員の未来について、思うことを教えてください。
 「人材派遣会社は将来的に安定雇用組織として社会の中核を担っていくだろうと考えている。派遣社員という柔軟性の高い働き方を、全世代で選択肢に入れてもらいたい。一つの新しい働き方として提案していく」
(聞き手=南東京・門脇花梨)
【略歴】大崎玄長(おおさき・もとなが)96年(平8)中央大法卒、同年日本エル・シー・エー入社。00年中小企業診断士の資格を取得。同社を退社し、06年地域密着型人材派遣会社のエヌエフエーを設立、社長。10年社会保険労務士有資格者資格を保有。大阪府出身、44歳。『やりたいことを仕事にするなら、派遣社員をやりなさい!』(総合法令出版)
日刊工業新聞2017年4月24日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
派遣会社の社長さんへのインタビューなのでこういう問答になるだろうが、うちの会社にいる派遣社員の方も総じてプロ意識が高いのは事実。ただ派遣社員と会社は割と利害関係がはっきりしている。一方で組織に対する従業員の帰属意識の高さや中長期的視点に立った人材育成システムなど日本型の雇用制度は企業競争力の源泉でもある。「やりたいことを仕事にするなら」という視点でいえば、副業やパラレルキャリアなどにも柔軟に対応していくべきだろう。

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