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三菱自、不正発覚から1年で改革は進んだか

「どこかに課題が埋もれることがなくなってきている」(山下副社長)
三菱自、不正発覚から1年で改革は進んだか

ゴーン会長と益子社長

  同社は燃費不正問題の公表から20日で1年を迎える。この間、資本業務提携した日産自動車の主導により、「再発防止策の実施」と「業績向上活動の推進」を柱とする社内改革に取り組んできた。開発プロセスの見直しや社員の意識改善など成果は着実に出つつあるが、人材流出で低下した開発力をどう補い、強みの個性的な商品作りにつなげていくのかにも注目が集まる。

 「課題をみんなで認識して取り組む動きが出ており、どこかに課題が埋もれることがなくなってきている」。日産から派遣され、三菱自で開発・品質を担当している山下光彦副社長執行役員は、改革に一定の手応えを示す。

 不正の再発を防ぐため、全31項目に及ぶ防止策を策定。日産を参考に開発プロセスを見直したほか、業界初となる走行試験データの自動計測システムの導入や技術者向け法規教育の制度化など、すべての施策を4月1日までに実行に移した。

 また、全社員参加型で組織や技術、文化の改善につなげる活動も展開。現状の認識と課題抽出により、構造・意識改革を図ることで同社全体の業績向上につなげる狙いだ。

 抜本的な改革が着実に進む一方、16年度の国内販売は15年度比約2割減の7万9802台と過去最低に沈んだ。ただ、服部俊彦専務執行役員は「我々の想定以上に顧客の代替え促進などが多かった」と振り返る。

 販売台数だけでなくブランド力の回復には個性的な商品開発が不可欠。「当社は特徴的なクルマ作りが強みなので、シーズではなくニーズを見据えた開発を進める」(山下副社長)と今後の開発方針を定めている。

 そのためには開発力の強化が喫緊の課題。カギを握るのが海外人材の活用だ。同社の開発体制は国内中心だったが、今後は中国や東南アジアの開発拠点も広く活用する。タイとフィリピン、インドネシアの東南アジアの開発部隊を強化するなど、グローバル開発体制の増強にも着手する。また日産からも、開発に関するアドバイスや知見の部分でサポートを得ているという。

 三菱自は16年10月に日産の出資を受け、仏ルノーを含めた連合体に参画。その中で三菱自としては「(東南アジアやSUVなど)独自の地域・商品の強みを発揮することが重要だ」と山下副社長。同社の再生は、連合体の成長に欠かせない要素でもある。
                     

日刊工業新聞2017年4月17日



小型SUV生産を水島に移管


 三菱自動車は18日、小型多目的スポーツ車(SUV)「RVR」の生産を2017年12月末に岡崎製作所(愛知県岡崎市)から水島製作所(岡山県倉敷市)に移管すると発表した。岡崎製作所で新型の小型SUV「エクリプスクロス」の生産を開始することに伴う対応で、投資額は数十億円とみられる。国内生産体制を最適化し、効率的な生産性の維持・向上につなげる。

 水島製作所は年間約35万5000台の生産能力を持ち、主に軽自動車の「ekワゴン」と「ekスペース」のほか、電気自動車(EV)「アイ・ミーブ」と輸出向けセダン「ランサー」を生産している。その内ランサーは17年12月末に生産を終える予定で、移管後はランサーのラインでRVRを生産する。

 三菱自はエクリプスクロスを17年秋から欧州を皮切りに、日本などに順次投入する計画。また19年度にはRVRの次期モデルも投入する見通し。生産移管によりエクリプスクロスの生産増加とともに、RVRの次期モデル投入までの操業確保も可能となる。

 岡崎製作所の生産能力は年間約23万4000台で、RVRと中型SUV「アウトランダー」を生産している。16年のRVRの生産台数は、前年比6割増の約11万9000台だった。
水島製作所

日刊工業新聞2017年4月19日

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
山下副社長の会見には出ていないが、日産が参画して以降、まずは社内における現状把握と体制づくりを優先してきたと思われる。その中でも車台の共通化などのプランなども出始めた。ただトヨタがダイハツを完全子会社化したように国内で二つの「ブランド」の個性を保ちながらシナジーを上げいくのは難しい時代になってきている。

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