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東芝、“一応の決算発表”で安堵する人たち。再建へカギ握る半導体売却

「数字には自信を持っている」(綱川社長)も上場廃止リスクは消えず
東芝、“一応の決算発表”で安堵する人たち。再建へカギ握る半導体売却

会見する綱川社長(11日)

 東芝の経営再建が“半歩”前進した。監査法人の「適正意見」のない異例な形ではあったが、延期していた2016年4―12月期連結決算を11日に発表し一応の区切りを付けた。ただ上場廃止リスクの解消、財務基盤の立て直しなど取り組むべき課題は多い。まず半導体メモリー事業を分社して設立した「東芝メモリ」の売却を成功させられるかがカギを握る。

 「不完全な形だが、決算を発表できた」。11日夜、東芝関係者は安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 米原子力発電子会社ウエスチングハウス(WH)が、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を3月29日に申請。これによりWHは東芝の連結子会社から外れた。

 「最大の経営課題」(東芝幹部)だったWHを切り離し、経営再建を本格化したい東芝。足かせとなっていたのが、16年4―12月期連結決算を発表できない事態だった。

 WHの内部統制問題の調査をめぐる東芝と監査法人との見解は平行線のまま。それでも東芝は監査法人の適正意見に代わり「意見不表明」という見解を付けて、同決算の報告書を提出した。

 綱川智東芝社長は「数字には自信を持っている」「これ以上延期になると信用不安の問題がある」などと説明し、“見切り発車”でも経営再建の歩を進める考えを強調した。

 東芝は現在、東京証券取引所の特設注意市場銘柄の指定を受けており、上場廃止リスクを抱える。同社は17年3月期に6200億円の債務超過に陥る公算が大きい。18年3月期中に債務超過を解消できない場合も、上場廃止となる。

 また財務基盤を強化しないと社会インフラとエネルギーを中核とする“新生”東芝の再建はおぼつかない。そこで東芝メモリを売却し、最低1兆円規模の資金調達を狙う。

 売却先を決める1次入札は3月末に締め切った。協業するウエスタンデジタル(WD)のほか米ブロードコム、韓国SKハイニックス、台湾の鴻海精密工業など海外の事業会社やファンドなど10社程度が応札したもよう。5月中に締め切る2次入札に向け、日本の企業連合で応札を目指す動きも出てきた。

 雇用維持などの条件交渉、技術流出の懸念払拭などハードルが低くない中、限られた時間内に最適な売却先を見つけ出せるか。新生東芝の重要なステップになる。
(文=後藤信之)
日刊工業新聞2017年4月13日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
東芝と工場を共同運営しているウエスタンデジタルが半導体入札で独占交渉権を要求してきた。条件闘争だろうが売却交渉は一筋縄でいかない。

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