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画像診断装置の高機能化はどこまで進むのか

高精細化、被ばく低減、手順効率…「製品価値だけでは認めてもらえない」
画像診断装置の高機能化はどこまで進むのか

シーメンスヘルスケアのハイブリッド手術室対応の多軸透視・撮影システム「アーティス・フィノ」

 医療機器各社は画像診断装置の高機能化に取り組む。画質の高精細化に加えて、被ばく低減などの安全性向上、業務手順の効率化といった患者や医療従事者の付加価値につながる提案に力を注ぐ。

 日立製作所は超音波診断装置「アロカアリエッタ850」を13日に発売する。プローブ(探触子)の機能を強化し、独自の超音波送受信技術を採用。通常、観察する部位で複数の探触子を使い分ける必要があるが「体の浅部から深部まで高画質画像を得られる。世界で拡販したい」(渡部真也執行役常務)と意気込む。

 富士フイルムは移動型デジタルX線撮影装置「DRカルネオアクロ」を訴求する。デジタルラジオグラフィー(DR)方式のカセッテサイズX線画像診断装置と画像処理技術、小型X線発生機を一体化。「手がけてきたことが全て詰まっている。小回りが利いて、低線量・高画質との認識が広がってきた」(後藤禎一取締役)。

 コニカミノルタはDRのカセッテ型デジタルX線撮影装置「エアロDRファイン」を“第3世代”と位置づける。パネルの画素サイズを従来の175マイクロメートル(マイクロは100万分の1)から100マイクロメートルに細かくした。
日立の超音波診断装置の最上位機種「アロカアリエッタ850」

 「静止画だけでなく動画など多様なことができる基盤となる。提供する診断価値を高める」(長谷川亨グループ業務執行役員)方針だ。

 また、血管内治療分野では島津製作所が血管撮影装置向けの画像処理技術を開発した。撮影中に画像を自動補正する技術と、X線照射量を増加させずに画像上のノイズを半減し視認性を高める技術。検査時間の短縮や治療の安全性を高めるものとして実用化を目指す。

 シーメンスヘルスケア(東京都品川区)はハイブリッド手術室対応の多軸透視・撮影システム「アーティス・フィノ」を発売し、東京慈恵会医科大学付属病院に納入した。Cアームの内径を13センチメートル広げ、X線透視を併用する手技でも作業スペースを確保できる。森秀顕社長は「低侵襲で正確な治療を短時間で行える」と強調する。
(文=村上毅)
日刊工業新聞2017年4月13日
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
画像診断装置も高画質化が進み、「製品の価値だけでは認めてもらえない」(瀧口登志夫東芝メディカルシステムズ社長)という指摘もある。作業環境の改善や安全性向上など「一歩進んだ臨床的価値を提供したい」(瀧口社長)。GEヘルスケア・ジャパン(東京都日野市)の多田荘一郎社長も「健康寿命を高めるため、治療を意識した診断が求められる」とし、研究機関などとの連携を深める。

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